大宅ノンフィクション賞がリニューアル 大賞に森健『小倉昌男 祈りと経営』読者賞に菅野完『日本会議の研究』

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 第1回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞(日本文学振興会主催)が17日に発表され、森健さんの『小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』(小学館)が大賞に選ばれた。新たに設けられた読者賞には、菅野完さん『日本(にっぽん)会議の研究』が選ばれた。

 大賞に選ばれた『小倉昌男 祈りと経営』は、「宅急便」の生みの親であり、日本を代表する名経営者の一人であるヤマト運輸元社長・小倉昌男の人物像に迫った一作。現役引退後、46億円もの私財を投じて「ヤマト福祉財団」を創設、障害者福祉に晩年を捧げた背景などこれまで全く描かれてこなかった小倉の素顔に迫っている。2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞を受賞している。

 ニュースサイト「シノドス」編集長で評論家の荻上チキさんは、《小倉が「困っているひと」に寄り添うようになったのは、それが自身の問題であったためではないか。大きな正義のためでなく、身近な困りごとのために、闘わざるを得なかったひと――。そう捉えると、途端に小倉の姿が身近に感じられてくる》(朝日新聞・書評欄)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/508908

 森健さんは1968年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中よりライター活動をはじめ、科学雑誌、経済誌、総合誌で専属記者を経てフリーランスとなる。2012年に「つなみ 被災地のこども80人の作文集」(文藝春秋)で大宅賞を受賞している。

 読者賞に選ばれた『日本会議の研究』は、安倍政権の背後にいるとされる「日本会議」の実態を描き、一時販売差し止めとなった話題のノンフィクション。「日本会議」とは何なのか? 誰のために何をなそうとしているのか? 中核にはどのような思想があるのか? など、膨大な資料と関係者への取材により明らかにする。

 政治学者の沼田良さんは、日本会議について《社会現象としての日本会議の背景は何か。それは、この国の未成熟さだと思えてならない。憲法の理念どおりの生活を経験していない戦後が産み落とした異形だと言えるだろう》(中日新聞社・書評欄)との見解を示しながら《本書はその実態に迫る。内幕を広く可視化した意義は小さくない》と同書を評価している。( https://www.bookbang.jp/review/article/514278

 菅野完さんは1974年奈良県生まれ。一般企業のサラリーマンとして勤務するかたわら執筆活動を開始。退職後の2015年より、主に政治分野の記事を雑誌やオンラインメディアに提供する活動を本格化。同年2月から扶桑社系webメディア「ハーバービジネスオンライン」にて「草の根保守の蠢動」の連載を開始。16年同連載をまとめた『日本会議の研究』を刊行。

 同賞は、ジャーナリスト・大宅壮一氏の半世紀にわたるマスコミ活動を記念し、1970年に大宅壮一ノンフィクション賞として制定。本年度から「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞」と名称が改められ、読者によるネット投票を導入。開催年の前年に発表されたノンフィクション作品全般を対象とする。一般読者によるネット投票と、日本文学振興会が委嘱した有識者による投票を集計したうえで、選考顧問の後藤正治(ノンフィクション作家)立ち会いのもと授賞作を決める。受賞作品は「文藝春秋」7月号で発表。

 過去には沢木耕太郎さんの『テロルの決算』(第10回)、猪瀬直樹さんの『ミカドの肖像』(第18回)、櫻井よしこさん『エイズ犯罪血友病患者の悲劇』(第26回)、佐野眞一さんの『旅する巨人』(第28回)、米原万里さんの『嘘つきア-ニャの真っ赤な真実』(第33回)、近年では増田俊也さん『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(第43回)などが大賞に輝いている。

 第48回の候補作品は以下のとおり。

『ルポ ニッポン絶望工場』出井康博(講談社)
『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(KADOKAWA)
『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』梯久美子(新潮社)
『日本(にっぽん)会議の研究』菅野完(扶桑社)
『小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』森健(小学館)

Book Bang編集部
2017年5月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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