藤子・F・不二雄からの最後の手紙 愛弟子が受け継いだ理想の「ドラえもん」[ゴロウ・デラックス]

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 稲垣吾郎さん(43)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」(TBS系)に10日、漫画家のむぎわらしんたろうさん(49)が出演した。藤子・F・不二雄の最後の弟子であるむぎわらさんが、伝説の漫画家の最後を語った。

■厳しかったF先生

 この日の課題図書は『ドラえもん物語~藤子・F・不二雄先生の背中~』(小学館)。ドラえもんが大好きで藤子プロのアシスタントになったむぎわらさんが、F先生との感動秘話を明かした作品だ。少年誌『「月刊コロコロコミック」2017年5・6月号に掲載された当時、大人が「泣ける」と大反響を呼び、単行本化された。また貴重な写真や新エピソードも収録され、ファン垂涎の一冊となっている。

 むぎわらさんは1988年の「のび太の日本の誕生」から作画に参加し、背景やキャラクターの洋服などを描いていた。94年にはチーフアシスタントとなったむぎわらさんだが、F先生は自分の好きな恐竜などの絵には厳しく、何度もダメ出しをされたという。

■F先生からの最後の手紙

 藤子プロダクションでは、F先生の下絵をもとにアシスタントが細かい部分を描くのが普段のスタイルだったという。96年当時、F先生は体調を崩しており、仕事場ではなく自宅で執筆を続けていた。その年の9月「のび太のねじ巻き都市冒険記」の連載が始まり、F先生から届いたのは第1回の扉絵を含む冒頭のカラーページ4枚と残りは下絵のみの状態だったという。それにペンを入れ、完成原稿にまで仕上げたのがむぎわらさんだ。

 描き終わり完成原稿のコピーをF先生に渡したところ、そのコピーに「今後のドラえもんをもっとこうして欲しい」との指示がびっしり書かれていたという。添えられたF先生からの手紙には、「欠点ばかり指摘した結果になりましたが、今後少しずつでも理想像に近づいていけばと思います。(中略)漫画は一作一作初心にかえって、苦しんだり悩んだりしながら書くものです。お互いガンバりましょう。藤子プロ作品は藤子本人が書かなくなってから、グッと質が上ったと言われたら嬉しいのですが」と描かれていたという。この原稿と手紙は『ドラえもん物語』にも収録されている。

 その指摘を参考に第2回を描きあげたむぎわらさんに、F先生は「これだけ描けるのなら、もっといろいろまかせればよかったよ」と温かい言葉をかけてくれたという。しかしその言葉がF先生からもらった最後の言葉となった。第2回完成直後の96年9月23日、F先生は亡くなってしまったのだ。

■思いを受け継いだむぎわらさん

 F先生の死で、「これでドラえもんは終わりだ」と悲観していたむぎわらさんに吉報が訪れる。葬儀から1週間後、F先生の机の上から「ねじ巻き都市冒険記」の第3回の下絵ラフが全ページみつかったのだ。F先生は意識が無くなる直前まで下絵を描いていたという。むぎわらさんはみつけたときの衝撃を「鳥肌がたちました」と語る。稲垣さんも「ドラマみたいな話ですね……」と感じ入っていた。

 むぎわらさんはその後、F先生の下絵とアイデアノートをもとに「ねじ巻き都市冒険記」を完結まで導いた。番組でもその下絵が公開されたが、一見しても何が描かれているかよくわからない原稿だった。しかしむぎわらさんは長年のアシスタント経験からF先生の意図を読み取ったのだ。

 稲垣さんは「見ただけじゃわからない。視覚的なものだけじゃないよね。心に寄り添っていくってことですよね」とF先生とむぎわらさんの心の絆に感銘を受けていた。また「みんなドラえもんと共に育ってきたのに、こういうエピソードとかF先生の人物像に触れることはなかったじゃないですか」とF先生の人となりが描かれたむぎわらさんの著書に敬意をあらわした。

ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。次回の放送は11月16日。ゲストはビートたけしさん。課題図書は『アナログ』(新潮社)。公式サイトでは予告動画を配信中。

Book Bang編集部
2017年11月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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