吉川英治賞が決定 篠田節子や西村京太郎、塩田武士、藤井太洋が受賞

文学賞・賞

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 吉川英治賞が3月4日(月)に発表され、第53回吉川英治文学賞に篠田節子さんの『鏡の背面』(集英社)が選ばれた。また、第40回同新人賞に塩田武士さんの『歪んだ波紋』(講談社)と藤井太洋さんの『ハロー・ワールド』(講談社)、第4回吉川英治文庫賞に西村京太郎さんの「十津川警部」シリーズが選ばれた。

 吉川英治文学賞を受賞した『鏡の背面』は、薬物依存症患者やDV被害者の女性たちが暮らすシェルターを舞台に、別人になりすました女性の謎を追ったサスペンス作品。「先生」と呼ばれて慕われていた女性が死亡し、警察の捜査によって別人であることが判明、その真相を探る。

 作家の朝井リョウさんは、本作について〈全編を通して描かれる、女性としてこの世界で生きていく上で被り得る事態の数々に触れると、物事を一面的に捉えることの危険性に震える〉(読売新聞・書評)と評している。(https://www.bookbang.jp/review/article/558953

 著者の篠田さんは、1955年、東京都生まれ。1990年に「絹の変容」で第3回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。1997年に『ゴサインタンー神の座―』で第10回山本周五郎賞受賞、同年『女たちのジハード』で第117回直木賞を受賞する。2009年に『仮想儀礼(上・下)』で第22回柴田錬三郎賞を、2015年に『インドクリスタル』で第10回中央公論文芸賞を受賞している。その他著書に『弥勒』『夏の災厄』『長女たち』『となりのセレブたち』『冬の光』などがある。

 吉川英治文学新人賞を受賞した『歪んだ波紋』は、現役の新聞記者や元記者を主人公に、さまざまな“誤報”とその後を描き、情報発信のあり方とその受け取り方を問う社会派のエンターテインメント作品。もう一つの受賞作『ハロー・ワールド』は、広告ブロッカーアプリ“ブランケン”を開発したチームを中心に、ブラウザアプリ、ドローン、ウェブニュース、SNS、仮想通貨といった話題を扱った連作短篇集。

 吉川英治文庫賞を受賞した「十津川警部」シリーズは、警視庁捜査一課の警部・十津川省三が、鉄道に関わるものを中心に、数多くの難事件を解決してきた日本を代表する推理小説。1973年に発表された『赤い帆船(クルーザー)』から40年以上に渡り続いているシリーズ作品で、テレビドラマも制作され、1979年に三橋達也主演で放送されて以来、高橋英樹、渡瀬恒彦、内藤剛志などが十津川を演じ、人気シリーズとして現在も放送されている。

 贈賞式は4月11日(木)に東京都内で行われ、受賞者には賞牌と賞金が贈られる。

 吉川英治賞は、1962年から続く大衆小説を対象にした文学賞。新聞、雑誌、単行本等に最も優秀な小説、評論、その他を発表した作家を対象にした吉川英治文学賞や最も将来性のある新人作家を対象とした吉川英治文学新人賞、5巻以上の複数巻で文庫を刊行しているシリーズ作品を対象とした吉川英治文庫賞の三賞が設けられている。

Book Bang編集部
2019年3月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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