「このミス」第1位に相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』 海外編は『メインテーマは殺人』

文学賞・賞

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 宝島社発行の「このミステリーがすごい!2020年版」(以下:「このミス」)が発売され、傑作小説ベスト20が発表された。

 国内編で1位となったのは、相沢沙呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社)。推理作家の香月史郎と霊媒師の城塚翡翠が、女子高校生連続殺人事件を解決していくミステリー小説。霊視と論理が補完しあう特殊設定推理の連作で、随所に散りばめられた伏線が多くの読者を唸らせている。著者の相沢さんは1983年埼玉県生まれ。2009年に『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2011年に『原始人ランナウェイ』が第64回日本推理作家協会賞(短編部門)候補作、2018年に『マツリカ・マトリョシカ』が第18回本格ミステリ大賞の候補作となる。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化が発表された。

 文芸評論家の円堂都司昭さんは、本作について「本来、謎解きを主眼とする推理小説は、合理的な内容であるべきだ。しかし、霊、超能力といった非合理なものを登場させつつ、超常現象がどのようなルールで起きているかを作中で示し、合理的な推理小説として成立させる手法もある。そうした特殊設定で書かれた推理小説は、本作も含め最近は少なくない。ただ、ここで作者はさらなるひねりを加えており、よくぞ仕組んだものだと思う。この驚きこそ魔法のようだ」(小説宝石・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/591343

 また、「このミス」の海外編は、昨年の年末ミステリ・ランキングや賞で軒並み1位に選ばれ7冠を達成した『カササギ殺人事件』の著者・アンソニー・ホロヴィッツさんの『メインテーマは殺人』(東京創元社)が1位に選ばれている。本作は自らの葬儀の手配をした資産家の婦人が絞殺される事件を著者自身が元刑事のホーソーンと共に捜査し、本にするという犯人当てミステリ。作者本人の遍歴が盛り込まれつつ、アガサ・クリスティ仕込みのフェアな謎解きが味わうことができる。著者のアンソニー・ホロヴィッツさんは、1955年英国ロンドン生まれの小説家・脚本家。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。2014年にはイアン・フレミング財団に依頼されたジェームズ・ボンドシリーズの新作『007 逆襲のトリガー』を執筆している。

 そのほか、「このミステリーがすごい!2020年版」では、ミステリー映画「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」に出演する乃木坂46の白石麻衣さんのインタビューのほか、皆川博子さんと辻真先さんの対談や綾辻行人さん、有栖川有栖さん、伊坂幸太郎さん、阿部智里さん、辻村深月さん、冲方丁さん、湊かなえさんなど62名の作家による新作情報やエッセイなどが掲載されている。

Book Bang編集部
2019年12月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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