宝島社発行の「このミステリーがすごい!2021年版」(以下:「このミス」)が発売され、傑作小説ベスト20が発表された。
国内編で1位となったのは辻真先さんの『たかが殺人じゃないか』(東京創元社)。本作はGHQの指導のもと制度改正が行われ男女共学となった学園を舞台とし、大戦の敗北を受け民主教育に変わってゆく中で大人はどう振る舞い若者は何を感じていたのか。著者自らが経験してきた時代背景を存分に描いた青春学園ミステリ。
書評家の杉江松恋さんは《半世紀近くになる作家歴の中で、辻が繰り返し書いてきたことがある。先の戦争がいかに嘘に塗れたもので、そのために若者の夢がどれだけ摘み取られてきたか、ということだ。本作でも、民主教育の上っ面だけをなぞって肚の中は変わらない教師たちの滑稽さ、ずるずると戦争を続けてきたことへの反省のなさが少年たちの視線から容赦なく描かれていく。若い読者に、大人の嘘を見極めろ、と促す小説でもある。》と評している。
(https://www.bookbang.jp/review/article/627654 )
著者の辻さんは、1932年愛知県生まれ。NHK勤務後、『鉄腕アトム』『サザエさん』など、アニメや特撮の脚本家として幅広く活躍。1972年に『仮題・中学殺人事件』でミステリ作家としてデビュー。現在でもTVアニメ『名探偵コナン』の脚本を手掛けるほか、大学教授として後進の指導にあたっている。
また、「このミス」の海外編は、ミステリファンから高い評価を得ている『カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』の著者・アンソニー・ホロヴィッツさんの『その裁きは死』(東京創元社)が1位に選ばれている。本作は離婚専門の弁護士が殺害された事件を元刑事のホーソーンが、壁には描かれた“182″の謎の数字を手がかりに事件の謎に挑む犯人当てミステリ。
著者のアンソニー・ホロヴィッツさんは、1955年英国ロンドン生まれの小説家・脚本家。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。2014年にはイアン・フレミング財団に依頼されたジェームズ・ボンドシリーズの新作『007 逆襲のトリガー』を執筆している。また、アガサ・クリスティへのオマージュ作『カササギ殺人事件』では『このミステリーがすごい!』『本屋大賞“翻訳小説部門”』の1位に選ばれるなど、史上初の7冠を達成。ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ第1弾『メインテーマは殺人』でも、年末ミステリランキングを完全制覇している。
そのほか、「このミステリーがすごい!2021年版」では、ミステリーの視点から「名探偵コナン」を徹底解析した特集が組まれ、作者の青山剛昌さんのインタビューも掲載されている。また、伊坂幸太郎さんのインタビューや綾辻行人さんや有栖川有栖さん、桜庭一樹さん、道尾秀介さんなど65名の作家による新作情報やエッセイなどが掲載
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