女性はホルモンの「隠れた知性」に導かれる――パートナー選びから「かわいらしさ」の基準まで

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女性って、気分屋で感情的? たしかに「女心と秋の空」などと言われたり、月経前症候群のように、よく知られた症状もある。そして従来、こうした不安定な性向・状態はネガティブに捉えられてきた。女性はホルモンに振り回され、感情や行動が変わりやすいというわけだ。

でも、本当にそうだろうか? 女性ホルモンは、数億年という生命進化によって育まれてきた。これほどの永い歳月を経てメス・女性の心身をかたちづくってきたものが、わざわざ生きものにマイナスに働くわけがない。一見、移ろいやすい感情・行動の裏には、女性自身も気づかないホルモンの「隠れた知性」があるのでは? そのことを教えてくれるのが、マーティー・ヘイゼルトン著『女性ホルモンは賢い:感情・行動・愛・選択を導く「隠れた知性」』(インターシフト刊)だ。

著者のヘイゼルトンは、名門カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の心理学教授で、女性ホルモン研究の世界的リーダーとして知られる。以下、本書の気になるトピックをご紹介しよう。

■「いい人」か、「セクシーなイケメン」か?

よく知られるように女性ホルモンには周期がある。そして、「排卵期」の数日間に妊娠可能性のピークが訪れる。生きものの進化にとって、一大イベントとなる時期だ。動物のメスはこの時期に、目立った外見の変化(ヒヒの赤く膨れた尻とか)やフェロモンを放つなどして、オスに妊娠可能なことを知らせる。

ところが、ヒトでは排卵は隠されており、女性自身でさえ正確な特定は難しい。しかし、著者らの研究によって、女性もひそかに男性を引きつけるアピールをしていることがわかってきた。妊娠可能性のピーク時には、女性は男性にとって好ましい匂い(体臭)を発している。また、排卵が近づくと声が高くなり、セクシーな服を選んだり、身だしなみにいつもより時間をかけたりする。競争心も増し、同性に意地悪をしたり、人間として見なさないようになったりすることもある。より社交的になって、家でこもっているより外出したくなる……。

極めつけは男性の好みが、ホルモン周期によって変わることだ。妊娠可能性のピーク時に、女性は「本命」以外の男性にも注目しはじめる。男性の好みも、安定感のある「いい人(よきパパ候補)」よりも、ワルっぽく支配的でランクの高い「セクシーなイケメン」に惹かれがちになるのだ。通常、女性は長期的なパートナー候補として、男性の「肉体的魅力」にはさほどこだわらない(対照的に男性はかなりこだわる)。ところが、発情期は例外で、肉体的に魅力のあるセクシーな男性に惹かれるようになる。これは動物のメスがよい遺伝子を伝えるために、より強く支配的なボスのオスに惹かれる傾向と似ている。

■母グマ効果

それでも、ヒトはこうした衝動を尻尾のように残しながらも、独自の進化を遂げてきた。継続的な「つがいのカップル」の形成だ。なぜ、つがい関係なのか? いちばんの理由は、ヒトの脳は大きく、生まれてから発達するまでに時間も手間もかかることだ。そのためには、多くの動物のように一時的ではなく、長期にわたって母親と関係を築く相手が欠かせない。

そんなパートナーには、「ミスター・セクシー」よりも、「ミスター安定性」こそがふさわしい。こうした長期的な関係を支えるために、ヒトはもうひとつ重要な進化をした。「延長された性衝動」である。つまり動物のメスのように発情期のみオスを受け入れるのではなく、それ以外でもセックスや性的戯れをする。相手の男性が長期的なパートナーとしてふさわしいかどうかも、一目惚れではなく、じっくり(じらして?)選ぶことができる。つまり女性は一方で「ミスター・セクシー」に思いを残しながら、一方で「ミスター安定性」を探している。理想はその最適な組み合わせだが、貴重な遺伝子資源は奪い合いも激しい。

さて、めでたくよきパートナーと出会い、妊娠・子育てへといたった女性にも、大きな変化が訪れる。「妊娠脳」である。妊娠した女性は、脳の配線が変わることがわかっている。記憶力はやや弱まるものの、観察力、共感力、直感は高まる。また、母乳育児中の母親は、冷静・沈着でストレスのレベルが低いが、いざとなると攻撃性のレベルが高まる(母グマ効果)。

そして、閉経後、おばあちゃんになっても、女性はホルモンの「隠れた知性」に導かれていく。たとえば、閉経後の女性は、「かわいさ」の基準がゆるくなる。このことは、自分の子どもに限らず、幅広い子どもを受け入れる余地のあることを示している。どうやら、女性は祖母として、自分の子ではない孫などの世話をする力を、進化によって授かっているらしい。

このようなホルモンの働きを知ることで、女性はより賢く、前向きに生きることができるだろう。そして、男性には女性たちのあの不可解な感情、あの行動の深いわけを教えてくれるに違いない。

インターシフト
2020年4月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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