「人口密度と幸福感は関係ある」浅田次郎が新作で描いた〈理想のふるさと〉とは[文芸書ベストセラー]

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 2月8日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『塞王の楯』が獲得した。
 第2位は『黒牢城』。第3位は『ブラックボックス』となった。

 今週も先週に引き続き第166回直木賞を受賞した2作が1位と2位にランクイン。3位も先週と変わらず、第166回芥川賞を受賞した作品となった。

 4位以下で注目は4位にランクインした『母の待つ里』。浅田次郎さんが〈ふるさと〉を求める都市生活者の〈帰郷〉を描いた物語。都会で成功を果たすも家庭も故郷も持たない3人の男女のもとに〈理想のふるさと〉への招待が届く。〈理想のふるさと〉では名前も知らない〈母〉が、都会で疲れ果てた息子・娘を温かく出迎えてくれる……。現代の日本が抱える様々な問題を背景に、都会人を魅了する謎のビジネスとそれを取り巻く人間模様を描いた感動作だ。

 同作では都会の人々が思い描く〈理想のふるさと〉が描かれている。浅田さんは刊行記念のインタビュー動画で《地方都市に行くとすごく幸せな感じがする》《人口密度と幸福感は関係ある》《人口密度が高い地域に暮らしている人たちは色んな理由で幸福を実感することができない》《甚だ勝手な地方観かもしれませんけれども、私から見た幸福というものはこの本の中に書かれている》と小説の中で登場する岩手を思わせる山里を〈理想のふるさと〉とした理由を解説。そこで描かれる光景は、東京生まれ東京育ちでふるさとというものに心当たりがない浅田さん自身の思いを反映したものであると語り、《おそらく都市で生まれ育った人たちはみんなこの小説は理解してもらえるんじゃないか》と自信を覗かせている。

1位『塞王の楯』今村翔吾[著](集英社)

どんな攻めをも、はね返す石垣。どんな守りをも、打ち破る鉄砲。「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説!(集英社ウェブサイトより)

2位『黒牢城』米澤穂信[著](KADOKAWA)

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。(KADOKAWAウェブサイトより)

3位『ブラックボックス』砂川文次[著](講談社)

第166回芥川賞受賞作。ずっと遠くに行きたかった。今も行きたいと思っている。自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より)気鋭の実力派作家、新境地の傑作。(講談社ウェブサイトより)

4位『母の待つ里』浅田次郎[著](新潮社)

5位『探花―隠蔽捜査9―』今野敏[著](新潮社)

6位『李王家の縁談』林真理子[著](文藝春秋)

7位『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬[著](早川書房)

8位『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成[著](KADOKAWA)

9位『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』遠藤和[著](小学館)

10位『正欲』朝井リョウ[著](新潮社)

〈文芸書ランキング 2月8日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2022年2月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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