【話題の本】『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太著

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■「書く」ことの本質考える

文章を書くプロが己の技術や規範を説く…という一般的にイメージされる「執筆論」とはずいぶん毛色が違う。執筆を仕事の一つとしながらも、日々「書けなさ」に苦しんでいるという4人が、悩みを打ち明け、励まし合い、脱稿への道筋を模索する-。そんな本書は昨年7月に刊行され、4刷2万部に迫っている。

過去の失敗談を赤裸々に語り合う座談会を経て、数々の至言が飛び出す。ベストセラー『独学大全』の著者、読書猿(どくしょざる)さんは「自分に対する要求水準の上昇は、執筆に対する高い意識がもたらすのではなく、ただ〈完成させることを引き延ばす〉という病の一つの症状にすぎない」とし、書くことは「断念」の積み重ねだとつづる。小説家としても活躍する哲学者の千葉雅也さんも「理想化から離れて書くこと」の効用に目を向け、文章の規範など気にせずに勇気をもって書き始めることを勧める。「賭けとして書く」のだと。

「書くことの本質を考える思想書でもある。初めて長い文章を書く学生の参考にもなるようで、大学生協からの発注も多い」と担当編集者。広大な白紙に立ち向かい、最後まで書き切るためのヒントがぎっしり詰まっている。(星海社新書・1210円)

海老沢類

産経新聞
2022年2月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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