医師が「やめたほうがいい」と語る“病院の選び方” 最高の医者に出会うために必要な5つの判断基準

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いい医療を受けるには、患者の姿勢がとても大事  イメージ画像(C)Shutterstock

 健康で長生きするためには、病院や医者を正しく選ぶことがとても大切です。といっても、どのように選べばよいのかわからない人は多いでしょう。

 糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を開業し、延べ20万人以上の患者を診てきた牧田善二医師は、『医療に殺されない病院・医者の正しい選び方』のなかで、「いい病院やいい医者を選び、いい医療を受けるためには、治療を医者まかせにするのではなく、患者さん自身が病気に向かい合い治療に取り組んでいく、患者さんの姿勢がとても大事」と述べています。

 では、自分が病気になったとき、何を基準に病院や医者を選べばいいのでしょうか。いい病院やいい医者に巡り合うために、牧田医師は『医療に殺されない病院・医者の正しい選び方』の中で、病院や医者を選ぶときに「これだけはしないでほしい」という「やめるべき習慣」を5つ紹介し、その理由を解説しています。

 以下、同書の中から抜粋・再編集してお届けします。

■やめるべき習慣(1) とりあえず近所の病院に行く

 ふだんからかかりやすい病気、誰でも経験するような発熱やセキ、頭痛などといった症状は誰にでも経験があると思います。

 こういったとき「とりあえず近所の病院に行く」のはやめましょう。

 カゼをひいてこじらせてしまったとき、高熱が出たり、セキがひどくなったり、関節が痛くなったり……。しんどくて「もしかしたら肺炎じゃないのか、このままだと死んでしまうのでは……」などと不安になったことはないでしょうか。

 こんなとき、どの病院にかかりますか?
 ほとんどの方は、おそらく近所にあるクリニックに行くでしょう。

 私は、これをおすすめしません。

「インターネットでクリニックなどを調べて、『呼吸器内科』という看板を掲げている病院に行く」ことをおすすめします。

 その理由は、セキを伴った発熱の場合は、呼吸器内科を専門にしている医者の専門分野だからです。セキがなく、鼻水やのどの腫れがひどい発熱の場合は、「耳鼻咽喉科」を受診したほうがいいでしょう。

 私は、医者は職人だと思っています。現在の医療はこまかな専門分野に分かれていて、医者は必ず何かしらの専門分野を持っているのです。

 病院の看板やホームページをチェックしてみてください。内科と書かれていたとしても、そのほかに「循環器内科(血圧や心臓の病気などが専門)」「呼吸器内科(気道や肺など呼吸器が専門)」「消化器内科(胃や大腸など消化器が専門)」など、専門分野がこまかく分かれています。患者さんにわかりやすいように、「糖尿病内科」と掲げる病院もあります。

 私もそうですが、医者が病気になったとき、その病気の専門外の医者を受診することは絶対にありません。それは、専門外の医者を受診しても意味がないことを、よく知っているからです。

 小さな病院やクリニックで一人の医者が診ている場合は、自分の専門を掲げているので、まずはそれをチェックしましょう。

 なかには、複数の専門分野を掲げている病院もあります。それぞれの専門分野の医者が複数いる大きな病院は別ですが、医者が一人しかいない個人病院でたくさんの専門を掲げている場合は、得意分野がないということになりますから、あまりいい病院とは言えません。

 基本的に、一人の医者が持つ得意分野は多くても2つか3つ程度です。医者を選ぶときには、必ず専門分野をチェックしましょう

■やめるべき習慣(2) 紹介された病院に疑問を持たず受診する

 熱が出た、下痢をした、血圧・血糖値が高いなど、ふだんからかかりやすい、重篤でない病気や症状であれば、近くにある専門分野の医者に診てもらっていれば、大きな問題はないでしょう。

 ただ、それらの症状が悪化して、命に関わったり、歩けないなど生活に大きな支障が出たときには注意が必要です。

 それまで通っている医者は、精密検査が必要になったり、手術を受けるために、より大きな病院を紹介しますが、すすめられるがまま、その病院にすぐに行くのはやめたほうがいいと私は思います。

 大学病院を紹介されたときには、どの先生を紹介してくれるのか、医者の名前も確認するようにしましょう。そして、インターネットなどでその先生の経歴を調べて、それなりの経験を積んでいるかどうかをチェックします。

 紹介される医者のキャリア(年齢の目安としては40代以降)や、年間に手術をどの程度行っているかもチェックします。若すぎると技術が未熟な心配がありますし、年間の手術数が少ない医者の場合も経験不足が心配されます。もちろん、手術数などは載っていないケースもありますが、インターネット検索を駆使して情報を集めることが大切です。

 紹介された医者の経歴に不安を感じたときには、別の病院を紹介してもらいましょう。紹介状はどこの病院に対しても書いてもらえます。その先生が紹介しているところしかダメ、ということはありません。

 自分の病気や症状の治療について、評判の高い病院や医者を探して、そこを紹介してもらうこともできます。

 なかには、「紹介状を書いてもらうようお願いしにくい」「先生の機嫌が悪くなるんじゃないか」などと心配する患者さんもいらっしゃいますが、それで機嫌が悪くなるような医者は、いい医者ではありません。

 また、患者さんご自身の命に関わることなのですから、自分の体のことを第一に考えて医者がどう思うかなど、気にすることはやめましょう。

■やめるべき習慣(3) 医者が手術すると言ったときに素直に従う

 精密検査や手術などを受ける必要があり、大きな病院を受診したとき、「今すぐ手術しましょう」と言われることがあります。このような場合、言われるがままに手術を受ける人がほとんどかもしれません。

 私はそれに反対です。
 これは手術そのものがダメだと言っているわけではありません。

 高齢の方で「今さら手術を受けなくても」などと、手術自体に否定的な方もいらっしゃいますが、医療技術の進歩は本当にめざましく、優れた手術であれば80歳を過ぎても手術を受けていいと私は思っています。

 ただし、それにはいい病院、いい医者にかかることが必須です。特に、重篤な病気や症状に陥った場合は、最高の医者を探して、その先生に手術をお願いすることを私は強くすすめます。

 難しい治療ほど、医者の技量によって治療後の状態が左右されます。最高の腕を持つ医者に治療してもらうことができれば、痛みが少なく、入院日数も少なく、確実に治療してくれます。

 また、受ける検査や治療が本当に必要なことなのかもはっきりと確認する必要があります。検査や治療のなかには、危険なリスクが伴うものもありますから。

 むしろ極端なことを言えば、どんな検査や治療にも少なからずリスクがついてきますから、必要のない検査や手術は受けない方がいいのです。

 ですから、入院が必要になると言われた場合は、セカンドオピニオンを求めてほかの医者の意見を聞くなどして、よく検討しましょう。

 セカンドオピニオンの結果が、かかっている病院とそれほど変わらなければ、受ける必要がある検査や治療だということがわかりますし、異なる治療方針が提示された場合は、考え直す必要があります。

 もし、すでにかかっている病院や医者が本当に信頼できるのであれば、素直にしたがって治療を受けてもいいと思います。そうでない場合はセカンドオピニオンを受けて、別の医者の意見を聞くことをおすすめします。

 セカンドオピニオンは公的医療保険の対象外のため、自由診療扱いになり全額自己負担になります。一般的には30分以内で1万円~1万5000円程度ですが、有名大学病院では30分で2万円と少し高額になります。大切な命を守るためですから、お金を惜しまず前向きにセカンドオピニオンを検討しましょう。

■やめるべき習慣(4) 医者に気兼ねする(遠慮する)

 これも、日本人に多く、ぜひやめていただきたい習慣です。

 病院を受診したとき、診察室で医者の前に座ると、気兼ねして質問ができなかったり、「こうして欲しい」という自分の希望を伝えることができない人は、わりとたくさんいるのではないでしょうか。

 例えば、私の専門である糖尿病だったら、定期的に通院して検査を受けたり、薬を処方されるわけですから、検査でどんなことがわかるのか、必要性があるのか、どのようなことに効く薬なのかなど、聞きたいことがいろいろとあるでしょう。

 こうしたとき、医者に気兼ねして質問しないということは、絶対しないようにしてください。医療は自分で納得して受けることがとても大事だからです。

 薬を飲むときに、「この薬は本当に効くのかなあ」「薬を飲んで副作用が出たらどうしよう」など、不安を抱えながら過ごすことは精神衛生上よくないことです。また、必要のない検査を行うのも、避けるべきです。遠慮せず、主治医に自分の疑問や不安に思っていることを聞きましょう。

 もし、その疑問に対してきちんと答えてもらえないなら、その医者をやめて別の医者を探したほうがいいと思います。

 医者にはいい医者もいればよくない医者もいます。横柄だったり、患者さんから求められてもきちんと説明しないような医者はいい医者ではありません。納得できない医者に通い続けるのはやめて、質問しても機嫌が悪くなったりせず、あなたにわかるように説明してくれるいい医者を探しましょう。

 いい医者はたくさんいますから安心してください。
 ただし、あまり笑わないので冷たそうに感じるといった理由で医者を変えるのはやめましょう。病気についてわかりやすく説明ができ、質問に対して的を射た回答ができる医者でしたら、その人はいい医者に必要な、“説明するスキル”があります。


遠慮せず、主治医に自分の疑問や不安に思っていることを聞きましょう  イメージ画像 (C)Shutterstock

■やめるべき習慣(5) 医療に払うお金を惜しむ

 日本の医療費は、欧米に比べて信じられないくらい安く設定されています。アメリカでは1日入院すると100万円はかかります。外来で1回の通院は、治療費だけで10万円くらいはします。医療保険に加入していれば自己負担分以外は保険でまかなわれますが、最初は自分で支払い、あとで返金されるというケースが多いため、患者さんはどのくらいの金額がかかっているかを実感できます。結果、病院や医者を見る目や選ぶ基準は、どうしても厳しくなります。

 日本の場合は、軽いカゼくらいであれば、1日にかかる自己負担分の医療費は2000~3000円程度ですみます。これは欧米では信じられないくらいの安さです。

 でもここでよく考えていただきたいのです。安く医療を受けるのと、高額だがきちんと治る治療を受けるのとでは、どちらがいいでしょうか。

 例えば、患者さんのなかには、医療費を節約するために検査数を減らせばいいと考える人がいます。「検査を減らしてください。余計な検査はしないでください」と言う方もいらっしゃいますが、それが命取りになることもあります。

 糖尿病のような慢性の病気は検査が不可欠です。なぜなら、検査しないと病気がよくなっているのか、悪くなっているのか、今の薬や治療でいいのか、副作用が出ていないかなどが判断できないからです。

 ところが、「検査はしなくていいので薬だけ出してください」という患者さんや、「病気は薬を飲みさえすれば治る」と思っている患者さんが、実にたくさんいます。特に、コロナ禍以降に増えました。

 先ほども言いましたが、治療には検査が不可欠です。病状は変わりますから、同じ薬を飲んでいるからといって、病気が改善して、その状態をコントロールできているとは限りません。ところが、それを理解していない患者さんが多いのです。

 この問題を解決するためには、医者が患者さんの信頼を得ることが大事であると私は考えています。患者さんが医者の言うことを本当に信頼すれば、どの検査も治療も必要があるからだと理解して、受けてくれるはずです。

 もちろん、疑問に思うことはなんでも質問してください。ただ、検査や治療についてはどんなに説明しても、患者さんが医学的に理解するのは難しいでしょう。だからこそ、医者を信頼できるか否かが大切なのです。そのためには、「この先生だったら自分の命を預けることができる」という、信頼できる医者を探すことが必要です。

 そして、患者さんは、信頼できる医者から必要な医療を提示されたときには、それにかかる医療費は惜しむことなく出して、適切な検査・治療・手術などを受けて欲しい――そう願っています。

牧田善二
AGE牧田クリニック院長。糖尿病専門医。医学博士。1979年、北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、『The New England Journal of Medicine』『Science』『THE LANCET』等のトップジャーナルにAGEに関する論文を第一著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師。2000年より久留米大学医学部教授。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業し、延べ20万人以上の患者を診ている。著書は『決定版 糖質オフの教科書』『老けない人はこれを食べている』(ともに新星出版社)、『医者が教える食事術 最強の教科書』『医者が教える食事術2 実践バイブル』(ともにダイヤモンド社)、『糖質中毒』(文藝春秋)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎)などベストセラー多数。

Fun-Life!
2023年7月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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