「ひとりの人間が育っていくために、一体どれほどの人間が関わっているのか」宮本輝の新聞小説『灯台からの響き』文庫版がベストセラー

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 7月4日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文庫第1位は『逆ソクラテス』が獲得した。
 第2位は『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9.5』。第3位は『52ヘルツのクジラたち』となった。

 4位以下で注目は5位『灯台からの響き』。宮本輝さんが2020年に発表した長編小説。板橋の商店街で中華そば屋を営む62歳の康平は妻を急病でなくす。それ以来店を閉め、ひきこもりのような生活を送っていた康平はふと妻宛の古い葉書をみつける。30年前に届いていたその葉書の送り主は誰なのか。生きる気力を失っていた康平が葉書に描かれていた灯台探しの旅のなかで、自分と妻の人生を振り返り、自分を取り戻していく。

 宮本さんは刊行時のインタビューで《ひとりの人間が育っていくために、一体どれほどの人間が関わっているのかということを、僕は『灯台からの響き』で書きたかった》《還暦を過ぎた男が、さらに人間として、成長していく。人間は、そこからまだ成長していけるんだということです。そういうことも含めて、人間ってすごいなあ、人間って深いなあというものを感じていただければ、書いた甲斐があったということです。》と同書に込めた思いを語っている。

1位『逆ソクラテス』伊坂幸太郎[著](集英社)

「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!? 表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。(集英社ウェブサイトより)

2位『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9.5』衣笠彰梧[著](KADOKAWA)

高度育成高校での二度目の冬休みがやってきた。軽井沢とクリスマスのプレゼントを買いに行くという約束は、軽井沢のインフルエンザにより崩れ、綾小路はイブからの数日を1人で過ごすことになった。 そんな中『えっと、今日、綾小路くんの昼間の予定ってどうなってるかな』『それは会ってからのお楽しみにいたしましょう。お部屋にお伺いしても?』『この後ちょっと顔を貸せ。30分後にケヤキモールの北口だ』、各クラスリーダーからの電話が絶えない状況となっていた。 一方「綾小路くんってただ暗めなクラスメイト……じゃないでしょ。隠し事があるっていうか」クラスメイトの間で綾小路に関する議論が行われ始め――!?(KADOKAWAウェブサイトより)

3位『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ[著](中央公論新社)

二〇二一年本屋大賞第一位。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年の新たな魂の物語――。〈解説〉内田 剛(中央公論新社ウェブサイトより)

4位『魂手形 三島屋変調百物語七之続』宮部みゆき[著](KADOKAWA)

5位『灯台からの響き』宮本輝[著](集英社)

6位『正欲』朝井リョウ[著](新潮社)

7位『クスノキの番人』東野圭吾[著](実業之日本社)

8位『怪物【映画ノベライズ】』坂元裕二[脚本]是枝裕和[監督]佐野晶[著](宝島社)

9位『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光[著](新潮社)

10位『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成[著](KADOKAWA)

〈文庫ランキング 7月4日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年7月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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