「リベラル化が生み出した問題を、リベラルが解決することはできない」社会正義の実現は「地獄」へと続く道だったのか?[新書ベストセラー]

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

 8月8日トーハンの週間ベストセラーが発表され、新書第1位は『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』が獲得した。
 第2位は『世界はなぜ地獄になるのか』。第3位は『堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』となった。

 2位に初登場の『世界はなぜ地獄になるのか』は『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』(新潮社)や『上級国民/下級国民』(小学館)など歯に衣着せぬ社会時評で知られる橘玲さんの最新作。誰もが自分らしく生きることができる社会を目指す「リベラル化」により噴出した新たな問題をとりあげ、社会正義の実現を求める運動がキャンセルカルチャーという異形のものへと変貌し、天国と地獄が一体となってしまったかのような現代の状況について解説している。同書で取り上げられる事例は「小山田圭吾炎上事件」「会田誠キャンセル騒動」「ジャニーズ事務所の性加害問題」等。

 橘さんは同書のまえがきで《光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。社会がますますリベラルになるのはよいことだが、これによってすべての問題が解決するわけではない》と述べ、リベラル化することの弊害を「格差拡大」「社会の複雑化」「孤独化」「自分らしさの衝突」とあげ、「世界が地獄になる」理由を解き明かしている。

1位『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』今井むつみ[著]秋田喜美[著](中央公論新社)

日常生活の必需品であり、知性や芸術の源である言語。なぜヒトはことばを持つのか? 子どもはいかにしてことばを覚えるのか? 巨大システムの言語の起源とは?ヒトとAIや動物の違いは? 言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。鍵は、オノマトペと、アブダクション(仮説形成)推論という人間特有の学ぶ力だ。認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る。(中央公論新社ウェブサイトより)

2位『世界はなぜ地獄になるのか』橘玲[著](小学館)

人種や性別、性的指向などによらず、誰もが「自分らしく」生きられる社会は素晴らしい。だが、光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現を目指す「社会正義(ソーシャルジャスティス)」の運動は、キャンセルカルチャーという異形のものへと変貌していき、今日もSNSでは終わりのない罵詈雑言の応酬が続いている──。わたしたちは天国(ユートピア)と地獄(ディストピア)が一体となったこの「ユーディストピア」をどう生き延びればよいのか。ベストセラー作家の書き下ろし最新作。(小学館ウェブサイトより)

3位『堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』堤未果[著](幻冬舎)

「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に為政者や巨大資本が、どさくさ紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など……。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは? 滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。(幻冬舎ウェブサイトより)

4位『裁判官の爆笑お言葉集』長嶺超輝[著](幻冬舎)

5位『日本史を暴く 戦国の怪物から幕末の闇まで』磯田道史[著](中央公論新社)

6位『「発達障害」と間違われる子どもたち』成田奈緒子[著](青春出版社)

7位『ウクライナ戦争の嘘 米露中北の打算・野望・本音』手嶋龍一[著]佐藤優[著](中央公論新社)

8位『脳の闇』中野信子[著](新潮社)

9位『客観性の落とし穴』村上靖彦[著](筑摩書房)

10位『なぜヒトだけが老いるのか』小林武彦[著](講談社)

〈新書ランキング 8月8日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年8月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク