【話題の本】『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』渋谷和宏著

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■「物申せない」現場の悲哀

昨年末の世間を騒がせた、ダイハツ工業の車両認証不正問題。同社が公表した「第三者委員会による調査報告書」の内容が話題だ。いわく、上が決めた無理な日程の死守、現場任せで関与しない管理職、「できて当然」の発想で失敗を個人責任に帰し激しく叱責する文化、人員不足が常態化し助け合わない組織風土…。

インターネット上で「まさに弊社」といった反応が多く見られたように、こうした寒々しい職場環境は、決してダイハツだけのものではない。かつては組織への高い帰属意識で知られた日本の会社員が、なぜこのような状態に陥ってしまったのか。経済ジャーナリストが、過去30年にわたる日本企業のマネジメント不全ぶりを検証したのが本書だ。昨年11月中旬の刊行以降、ネットを中心に反響を呼んでいるという。

著者が最大の要因として挙げるのが、バブル崩壊以降に定着したコストダウン最優先の「縮み経営」だ。リストラなどで終身雇用の慣行が失われ、人件費削減の強い圧力下で減点主義的な処遇が横行した結果、上に物申せない萎縮した現場が生まれ、数々の企業不祥事にもつながった、と結論付ける。多くの日本企業が抱える病理を、鮮明に突き付ける一冊だ。(平凡社新書・1045円)

磨井慎吾

産経新聞
2024年1月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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