「ウマ娘」で一躍話題に! 引退馬牧場で友情を深める猫と馬たちの物語『ボス猫メトとメイショウドトウ 引退馬牧場ノーザンレイクの奇跡』試し読み

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 競走馬を引退した馬が余生を過ごす引退馬牧場・ノーザンレイク。「ウマ娘」でも人気のタイキシャトル(認定NPO法人引退馬協会所有、2022年8月17日没)とメイショウドトウ(認定NPO法人引退馬協会所有、3月26日で満28歳)がやって来たのをきっかけに、牧場の人気は急上昇。しかし、その人気には1匹のボス猫の存在が欠かせなかったのです……。

 以下、『ボス猫メトとメイショウドトウ 引退馬牧場ノーザンレイクの奇跡』(佐々木祥恵・著、辰巳出版)より一部を試し読み公開いたします。

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遊びに誘うドトウと焦らすメト

 北海道日高地方沿岸の中部に位置する新冠町(にいかっぷちょう)は、日本有数の競走馬の産地となっている。その新冠町に引退馬の牧場「ノーザンレイク」がある。
 相方で元JRA厩務員の川越靖幸と、2人で引き取った愛馬キリシマノホシ、そしてキリシマの友達として譲り受けたアシゲチャンとともに、ノーザンレイクに足を踏み入れたのは2020年7月15日。その3日後、ニャアという鳴き声とともに草むらの中から突如現れたのが、茶白で鍵しっぽの猫、メトだった。調べてみると、鍵しっぽの猫は、しっぽの曲がった部分に幸運を引っ掛けてくると言われていることがわかった。まさか本当にノーザンレイクにたくさんの福を招く猫になるとはこの時は想像だにしなかった。


川越さんに抱かれるメトと寄り添う佐々木さん

 メトは異常に人懐っこくおしゃべりをし、来客があるとすぐに出てきてもてなしをする。馬たちにもあっという間に馴染み、厩舎の中も我が物顔で闊歩していた。川越と私が些細なことで口喧嘩をすると、間に割り込んできて仲裁もする。いつしかメトは、ノーザンレイクのムードメーカーになっていた。
 2021年6月、人気ゲーム「ウマ娘」のモチーフにもなっているメイショウドトウとタイキシャトルが仲間に加わり、牧場内の空気が変わった。Twitter(現X)のフォロワーが毎日100人単位で増えていき、それまで1000人に満たなかったフォロワーがあっという間に1万人を超えた。私がドトウをドットさん、シャトルをシャトじいじとSNS上で呼び始めると、それもあっという間に浸透して驚いた。メトが2頭に絶妙に絡むものだから、メトの人気も急上昇。2022年5月にドトウの背中にメトが飛び乗った動画をSNSにアップするとドトウ&メトの人気は爆上がりし、メディアでも取り上げられるようになった。ネットやテレビなどメトが主役の取材も増え、メトの人気にも火がついた。


肌寒い日用の「薄馬着」着用のドトウの上に乗る

 メトは最初から人見知りせず、人の肩や背中に乗るのが大好きで、厩舎内でも放牧地周辺でもごく自然に行動していた。馬の方からメトに近づいていくと逃げることもあるが、特別怖がっている様子もない。
 開場3日後に突然現れた猫だったが、いつしかメトはノーザンレイクにいるのが当たり前の存在になっていた。始めは厩舎がねぐらだったメトだが、寒い冬を厩舎で過ごさせるのはさすがに胸が痛み、家に入れることにした。
 こうしてメトは、家の中という安心できる場所も手に入れて、晴れてノーザンレイクという家族の正式な一員となった。

(続きは書籍でお楽しみください)

辰巳出版
2024年2月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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