最優先すべきは「リスニング」。「挫折のもと」を捨てれば英語力はどんどん伸びる

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捨てる英語勉強法

『捨てる英語勉強法』

著者
関口千恵 [著]
出版社
明日香出版社
ISBN
9784756919106
発売日
2017/06/12
価格
1,540円(税込)

最優先すべきは「リスニング」。「挫折のもと」を捨てれば英語力はどんどん伸びる

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

いろいろな思い込みや間違った勉強習慣、つまり「挫折のもと」を捨てることによって、英語力はどんどん伸びる。そう主張しているのは、『捨てる英語勉強法』(関口千恵著、明日香出版社)の著者。これまでに世界50カ国以上の人々と出会い、外国語習得のコツを蓄積してきたという人物です。

留学当時は、まったく英語のできなかった私ですが、今ではTOEIC®︎テスト990点(満点)になりました。コンサルティング会社に勤め、これまで世界29カ国以上の人たちと一緒に仕事をしてきました。(「はじめに」より)

つまり、そうしたプロセスのなかで得た独自の英語勉強法を明らかにしたのが本書だということ。具体的には「リスニング」「スピーキング」「リーディング」「ライティング」について、「超実践的な学習法」が紹介されています。「まずはリスニング力の向上に力をいれるべき」という著者の言葉に従い、きょうは第2章「リスニング編」に焦点を当ててみます。

リスニング力を磨いて「聞こえる快感」を知る

リスニング力がつくことで、英語でのコミュニケーションのストレスを一気に捨てることができ、英語を使うことがぐんと楽しくなるのだと著者は記しています。そのため、本格的に英語が必要になる前から、安心・安全な状態で早めにリスニング力を高めておくべきだとも。リスニング力の基礎さえできあがってしまえば、「リーディング」「スピーキング」「ライティング」の技能についてはそれなりにごまかしが効くというのです。

リーディングやライティングは自分のペースでできるため、辞書や例文集を参照したり、人の力を借りたりすればどうにか対応することが可能。スピーキングも伝えたいことをあらかじめ文章にしておけば、ある程度カバーできるのだそうです。

ビジネスパーソンであれば、リスニング力さえつけておけば、あとはテクニックで他の能力を補いながら仕事を進めることができるようになります。

いったんそのレベルに達してしまえば、英語を必要とする仕事を引き受けやすくなるので、日々の仕事の中で語学力を向上させられます。

大事なのは、「英語がわからない」という不安感を捨てることです。(48ページより)

「基本的なことは理解できる」という自信さえついてしまえば、多少聞き取れないことがあったとしても気後れすることなく、積極的に質問できるようになるといいます。そしてそこから、自転車のギアを上げるように、英語が一気に楽になるのだということ。

ちなみにリスニング力は0か100かといったたぐいのものではないため、ある程度聞き取れるようになったとしても、一気に完璧な状態になれるわけではありません。著者は、そのことを意識しておいてほしいのだそうです。この点を理解しておかないと、習得の途中で自分を責めることになってしまいがちだから。

たとえば日本語でも、自分の知らない話題であれば、さっぱり話についていけないということはいくらでもあるもの。英語も同じで、馴染みのある話題なら理解できるものの、まったく知らない専門用語がちりばめられた話が理解できなくても当然。事実、いま英語ができる人たちも、そうしたステージを経て、だんだん理解できる話の幅やジャンルを広げてきたわけです。

だから「はじめから完璧なスピーキングを!」と意気込むことなく、気楽に前に進むことを著者は勧めています。きちんと英語を聞くことを続けていれば、焦らなくても基本的なリスニング力は必ず向上するもの。あとは、いかに楽しくて毎日続けたくなる方法を見つけるかが大きなポイントになるそうです。(46ページより)

英語力が伸びる教材に出会う方法

リスニング教材を選ぶとき、なにを選んだらいいのか迷うこともあるかもしれません。しかし著者は、なにを使っても英語は聞き取れるようになると断言しています。リスニング力を向上させたいとき、「なにを聞くか」は本質的に重要な問題ではなく、なにより大切なのは「いかに楽しく英語に触れられるか」だというのです。いうまでもなく、楽しければ、ラクに英語を習慣化することができるから。

そのため、自分の好きでないもの、興味のないものはバッサリ捨てなくてはいけないのだといいます。「なんとなくよさそう」という気持ちで手を出した教材は、雰囲気で選んでしまっただけのもの。そのためいつの間にか、本棚の隅に追いやられてしまうというわけです。だから、気乗りしないものはできるだけ排除し、自分が好きな音声を聞くべきだということ。

よくあるのは、映画やテレビドラマ、あるいは好きな有名人のインタビューなどです。日本語を学んでいた外国人の友人の中には、日本の落語やお笑いが大好きで、CDを聞いたりYouTubeを見て日本語を学んでいたという人もいます。(51ページより)

わからない部分があったとしても、「この部分、なんて言っていたのか知りたい!」「この単語は何度も出てくるけれど、どういう意味なのか気になる!」という気持ちがわいてくるもの。すると集中して聞けるようになり、自然に単語を調べてしまうので、リスニング力の向上スピードが速まるというわけです。

そればかりか、好きなものを聞くという方法には他の利点もあるのだとか。それは、「予備知識があるため内容を理解しやすい」ということ。自分が好きな内容や得意な分野に関することを教材として選べば、英語力の足りないところは、もともと持っていた予備知識でカバーすることができるのです。そこで、まずは自分がワクワクできそうなものはなにか、ゆっくり考えてみるべきだといいます。(50ページより)

100%聞き取れるリスニングトレーニング法

著者によれば、難易度の高い音声であっても絶対に理解できる方法があるのだそうです。それは、「台本がついている音声を選ぶ」こと。台本がついているということは答えがあるのと一緒なので、あとで中身を確認することが可能。きちんとくり返せば、どんなに難しい音声であっても、最終的には台本なしにリスニングができるようになるというのです。

映画やテレビドラマ、有名人のスピーチなどは、大人のネイティブスピーカー向けにつくられているもの。難しい単語が多くスピードも速いので、一生懸命聞いても理解できないことがありますが、台本があれば心配無用だというわけです。

台本を見てセリフの内容と知らない単語をすべて確認してから再度音声を聞くようにすると、いずれすべてが聞き取れるようになります。(55ページより)

音声と台本の内容を結びつけて理解するということですが、はじめは1〜2割しかわからなかった音声も、最終的にはすべて理解できるようになるというのです。なお、リスニング力は次のような3ステップで鍛えるといいそうです。

ステップ1 台本を見ずに繰り返し聞く

台本を見ず、耳が音に慣れるまでひたすら音声を聞き続けるのが最初のステップ。わからない部分が多くても、音の流れや知っている単語に注意を払って耳をすませることが大切。慣れてきたら、シャドウイング(聞こえた音声をそのまま自分で真似する)をしてみるのもいいとか。

ステップ2 台本をチェックする

耳が音に慣れたら、ここで初めて台本を見てみる。そうすれば、自分では聞き取れなかった音の塊の正体が明らかになるといいます。もしわからない単語があった場合は、日本語の対訳を見たり辞書を引いたりして、全体の意味が理解できるようにすることも忘れずに。

ステップ3 もう一度台本を見ずに聞く

意味がわかるようになったところで、もう一度台本を見ずに音声を聞いてみるといいそうです。台本なしでも音声がすべて聞き取れるようになるまで、何度もくり返し聞きなおすことがポイント。

このステップを踏むことによって、英語の音声とスペルが身につくようになるのだといいます。(54ページより)

大切なのは、初期段階で目標の立て方を変えることだと著者はいいます。英語を身につけてどんなことをしたいのか、具体的な場面を思い描くことが重要だというのです。そして目標が見つかったら、次にすべきは、目標を実現するために必要な英語力を身につけること。

そのためには、本書の流れに沿ってスキルを身につけていくだけでOKだと著者は主張しています。「英語力をなんとかしたい」という思いを抱いている方は、手にとってみてはいかがでしょうか。

メディアジーン lifehacker
2017年9月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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