“コックリさんの父” オカルトブーム火付け役を追うドキュメント

レビュー

6
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コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生

『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』

著者
岡本 和明 [著]/辻堂 真理 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103245339
発売日
2017/08/18
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「オカルト現象」火付け役の知られざる波瀾万丈の人生

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 四十代半ばより上の年齢だったら、超能力ブームや、心霊写真を特集したテレビ番組を覚えている人が多いだろう。私も小学生のころ、テレビで呪いの儀式や超能力、UFO、幽霊などの番組を怖がりながらも見入った記憶は鮮明だ。中岡俊哉という名のいかめしい顔をした男性が解説していたのも、よく覚えている。

 しかし、本書はそういったオカルト現象について書かれた本ではない。中岡俊哉という男の一生を、生前交流のあった放送作家と、中岡の息子のふたりで辿ったドキュメントだ。

 昭和十八年、馬賊に憧れ十七歳で満州へ渡った中岡は終戦後も中国に残り「抗日民主連盟」の一員となる。八路軍の兵士として中国の革命戦争にも参加。その後、北京放送局で日本語のアナウンサーに採用された。メーデー式典や国慶節式典の日本向け実況放送を任されるほど活躍していたが、望郷の念は抑えがたく昭和三十三年に帰国した。

 外務省所管の財団法人、ラヂオプレスで働きながら書き溜めてきた中国の民間伝承や怪談・奇談を新聞に連載したことであっという間に売れっ子ライターになった。他の国の怪奇現象にも目を向け、ブラジルの呪いの儀式をフィルムに収めた初の日本人となったのだ。

 昭和四十年代テレビはお茶の間に欠かせないものとなる。オカルト番組は人気を博し中岡は寵児となった。だが彼は自分が見聞きし、体験して納得したものでないと紹介しないと決めていた。

 ユリ・ゲラーブームのもと、超能力を持つ少年少女を発掘し、コックリさんブームをいち早く察知。心霊科学研究家として解説した本はベストセラーとなった。読者から送られた心霊写真を集めた本も大流行する。

 中岡は私財を投じて世界の研究者と交流し真理を見極めようとした。 自分が死んだら“あの世”の存在を証明したいと語っていたが、未だにその約束は果たされていない。

新潮社 週刊新潮
2017年9月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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