「世界一受けたい授業」で話題沸騰! 1日3分の足指ストレッチで72kgを軽々持ち上げる79歳に驚愕
[文] 山岸美夕紀
1日に3分間、足の指を伸ばすストレッチをするだけで、長年患っていた腰痛やひざ痛、リウマチ、O脚・X脚などさまざまな症状が改善する「ゆびのば体操」。クリニックの院長である今井一彰先生がたくさんの患者さんたちを治療する中で生まれたこのメソッドは、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系・10月27日放送)などさまざまなメディアでも紹介され、大反響を呼んでいます。このメソッドを詳しくまとめた『足腰が20歳若返る足指のばし』についてお話を伺いました。
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――まず、本書を出版されたきっかけを教えてください。
ライフワークとしている“鼻呼吸”に関する本はこれまで何冊か出版しているのですが、足指体操に関しては、監修した本はあるものの自著はありませんでした。
そんな折、縮小する医療保険の流れの中で、これは大変珍しいことなのですが、小児の口腔機能管理の推進に当たって平成30年の診療報酬改定により歯科疾患管理料が設定されたのです。これには口呼吸の弊害に対する指導も含まれます。そんな流れもあって、鼻呼吸の重要性についてはある程度、世間で認知されてきたと思いました。ひとまず呼吸に関して私がやるべきことは一区切りがついたかなと。もちろん多くの方々のご尽力の賜なのは当たり前なのですが。
次にみなさんに知ってほしいことは、もう一つのライフワークである足指の健康に関してだと思い、今年は「ゆびのば体操」の本を創ろうと考えていたところ、ちょうど今回の編集担当の古川さんに声をかけてもらったんです。本当にいいタイミングでした。
――体の不調につながる足指のゆがみを見つけるさまざまなテストから、「ゆびのば体操」「ゆびのばウォーク」「正しい靴選びの方法」などを提案されていますが、もっとも基本となる1日3分の「ゆびのば体操」のやり方を改めて教えてください。
はい、まずは床やイスに座って片足を太ももの上に乗せ、足指の間に反対側の手の指を入れます。この際、足指の根元にはすき間をつくり、卵を握るようにふんわりと優しく握るのがポイントです。そして、手首は動かさず脇を開く感覚でゆっくりと足の裏側を伸ばし、5秒キープ。足の親指を手の母指球で押すようにしましょう。足指は30度ほど曲げれば十分で、ねじったり強く曲げてはいけません。次に、今度は足の甲側を優しく伸ばし、5秒キープします。今度も手首を動かさず脇を閉じる感覚でゆっくりぐーっと気持ちよく伸ばしましょう。
この足の裏側と甲側を5秒ずつ伸ばす動作を交互に行い、両足それぞれ15~20往復すると計3分ほどになります。まずはこの簡単な3分ストレッチを毎日行いましょう。歩く前と帰宅後、寝る前など、時間は短くていいので細切れに数回に分けて行った方が効果的です。
――この足指のばしのメソッドは、特にどんな方に読んでもらいたいですか?
高齢の方々はもちろんですが、それよりも若い40~50代くらいの方、できれば20~30代の方にも読んでいただきたいですね。
というのも、体に症状が出たときでは、タイミングとしては遅いんです。たとえば私たちが歯医者さんに行くときというのは、歯が痛くなったりグラグラしたりしてからですが、そうではなく、もっと初期の段階に治療をはじめる。さらにいえば、健康なときから予防をはじめるのが最良ですよね。病気になってから治そうとするより、病気にならないようにすることが一番いいに決まっています。
そのためには、予防の方法を知らなくてはいけません。その方法として「ゆびのば体操」を広めたいという気持ちがあります。
たとえば靴のサイズを間違えていたとか、そのせいで足指が変形し、それが身体のゆがみを作っていた、ということも「知っていれば」防げたこと。こういった情報を提供することで、長い期間、辛い症状に苦しむ人が少しでも減ればいいなと思っています。
――本書を通して、もっとも伝えたいことは何でしょう?
やっぱり、「身体は徐々に壊れていく」ということです。制度上は65歳から「高齢者」と呼ばれますが、そのときを境に急に変わるわけではありませんよね。自分ではなかなか気が付きにくいものですが、身体は緩やかに確実に変化している。
体重もいきなり増えるわけじゃなくて、今日は500g増えて、今日は300g減って、また500g増えて……という感じで、気が付けば3年前と違う体になっていますよね。病気もそれと同じですから、油断せずに、早いうちから予防策をとっていくことが大切なんです。
また、身体が改善に向かうときも同様に、いきなり良くなるわけではなく、ある程度の時間がかかることが多いでしょう。「ゆびのば体操」も、一回二回やって良くならなくてもあきらめずに継続することが大切だと思います。
すべての問題というのは生活習慣ですから、その生活習慣をいかに改めるのかというところに意識を向けて、毎日歯磨きをするように「ゆびのば体操」も行ってほしいですね。
――1日3分なら、毎日でも続けられますね。制作上の苦労はありましたか?
そうですね、出版社は東京、私の病院は福岡にあるので、距離的、時間的な制約があったということでしょうか。「ちょっと質問があるから今から行きます」なんていうことができない。それが一番大変だったかもしれません。
でも今回は、綱渡り的な感じではありましたが、意外とうまい具合にスケジュールもハマッたんですよね。7月には、空いている日程が1日しかなかったのですが、その日に上京して撮影をすることになり、さらに当日にピンポイントでテレビ出演の依頼が入ったり。一日のうちに取材もギュッと詰め込んで、なんとか形になりましたね。
――お忙しいなか、本当にありがとうございました。では最後に、先生のお薦めの本を教えてください。
扇谷正造さんの『君よ 朝の来ない夜はない』(講談社)です。
この本は、17歳のときに初めて読んでからこれまで100回以上も読みました。すでに絶版になっていますが、これまでに3回くらい買い直したでしょうか。著者は、「週刊朝日」を10万部程度から150万部ほどに伸ばした名物編集者で、もう30年ほど前の本ですから、内容的にはもう現代にそぐわないものも多いのですが……。最初は私の父がプレゼントしてくれたんですよ、「面白い講演に行ってきたぞ、この本と一言一句違わず同じことを言っていた」と言って。それが私にとって衝撃的で、「僕も将来、講演をする人になろう」と思ったんですね。
結果として、医学部に入って医者になりましたが、現在では「息育」と「足育」の2つの「ソクイク」を広めるべく、全国を講演やセミナーで回ってお話しているのですから、あのころの夢は叶っているといえるかもしれませんね。
――学生時代の夢を叶えられたのですね。本日はありがとうございました。
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【著者プロフィール】
今井一彰(いまいかずあき)
みらいクリニック院長/内科医/日本東洋医学会漢方専門医/日本病巣疾患研究会副理事長。
全身の痛みや不調は足指が原因であることを発見し、足元からの健康づくり「足育」を提唱。「薬に頼らず、一生歩ける足づくり」をモットーに、足を専門に診る「痛みと姿勢の外来」で、現在までに1万人超の「足と足指」を診察してきた。クリニックには、他の病院では治らなかった患者ばかりが集まってくる。福岡県内の保育園と連携し、開発した「ゆびのば体操」は、誰でも簡単にできる足のセルフケアとして、福岡県を中心に全国500以上の保育園や小学校、病院、介護施設で実施されている。足腰の痛みの軽減だけでなく、転倒が減り、運動能力(ジャンプ力、走る速度)がアップしたという結果も出ている。全国各地で「ゆびのば体操」を広げる講演や、「ゆびのばセミナー」を実施。どの会場でも満席が相次ぐ人気講演となっている。著者の元には、毎日「20年悩んだヘルニアが治った」「寝たきりから歩けるようになって、海外旅行に行けた」「くる病の子どもが歩けるようになった」など、感謝と喜びの声が毎日寄せられる。その取り組みは、NHK「おはよう日本」「あさイチ」、TBS「ジョブチューン」などのテレビ番組をはじめ、ラジオ、新聞などで多数取り上げられている。著書(監修)に、『はいて歩くだけでやせる! 魔法のくつした』(主婦と生活社)などがある。