2カ月で15万部突破した『英単語の語源図鑑』。現役高校講師の著者が制作秘話を語る!

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2カ月で15万部突破した『英単語の語源図鑑』。現役高校講師の著者が制作秘話を語る!

[文] 山岸美夕紀

「わかりやすい」「楽しい」「切り口が新鮮」といった反響を多く呼び、2カ月であっという間に15万部突破(8月27日現在)という、学習参考書として異例の売れ行きを記録する『英単語の語源図鑑』。受験生や英検・TOEICテストを受ける人だけでなく、「大人の学び直し」として購入される方も多い一冊です。本書を手掛けた清水建二先生にお話を聞きました。

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『英単語の語源図鑑』を手掛けた清水建二先生
『英単語の語源図鑑』を手掛けた清水建二先生

――発売直後から火がつき、Amazonの総合1位にも輝いた『英単語の語源図鑑』ですが、学生の方はもちろん、70代、80代という年配の方まで実に幅広く支持されていることにも驚きます。「嫌いな英語が、この本を読んで好きになりました」といった熱い感想が弊社にも届いていますが、先生が本書を執筆されるきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 語源とイラストをテーマにした本は以前から何冊も出版していて、ベストセラーも作ってきました。ただ、それは私が真に望む形の本ではありませんでした。すべての見出し語にイラストをつけたいと考えていたのですが、予算などの関係でどの出版社でも難しいと言われ、それはなかなか叶わなかったんです。そんななか本書では、共著のすずきひろしさんと共に、イラストレーターの本間昭文さんにも携わっていただき、すべての単語にイラストをつけることができてとても満足のいく一冊に仕上がりました。

――「並べた端からすごく売れると」、書店さんも盛り上がってくださっています。弊社でも、語学の本がこんなに売れるのは初めてです。

 私も、きっと売れるだろうと自信を持ってはいましたが、2カ月ちょっとであっという間に15万部までいくなんて想像していなかったので、嬉しいですね。かんき出版さんとは今回初めての仕事でしたが、全国紙などで大きく宣伝してくれるところも魅力でした。

――この本には100の語源とそこから派生する単語、全部で600個以上のイラストを掲載していますが、すべてをイラスト化するということには難しさがあったのではないでしょうか。

 イラスト原案のすずきさんとイラストを手掛けてくださった本間さんは、大変苦労されたと思います。ただ、私の作業としては、これまで語源の本を色々と作ってきてノウハウはわかっていたので、それほど時間はかかりませんでした。単語の重要度や使用頻度が上位のものを中心に、易しすぎず難しすぎないものを……と考えて、さらに、できるだけイラスト化しやすそうな単語を選定していくという感じでしたね。

――本書の特長として、「ad-(~の方へ、~の方を)」「de-(離れて、下に)」といった “接頭辞”に焦点を当てて、12種類に分類していることも挙げられますが、この構成は他に類のない斬新なもので、とてもわかりやすいです! 本書のなかで、もっとも重要だと思われる単語や思い入れのある単語というものはありますか?

 そうですね、もちろんどれも重要ですが、もっともイメージしやすい語根でいうと、本書204ページの「port=運ぶ、港」。support、export、transport、opportunityなど、portを使った言葉は日本語に定着していて、イラスト化もしやすいんです。
 私は長年、高校の教員を務めているのですが、中学生に向けた学校説明会での体験授業や中学校への出前授業などでも、このportを取り上げることが多いですね。彼らが知っているpassportやairportという単語を取り上げ、「この単語は2つに切って考えるとわかりやすいよね」という話から入っていくと生徒も食いついてくれるんです。

本書に掲載している「port=運ぶ、港」のページ
本書に掲載している「port=運ぶ、港」のページ

――先生は教師として勤められつつ、20年以上前から英語本を出版されていますが、最初に本を出版されたきっかけはどんなものだったのでしょうか?

 生徒たちから「先生、英語を勉強するのにいい本ない?」と聞かれるたびに色々探したのですが、なかなか私が納得できる本が見つからなかったんですね。「じゃあ俺が作るか」ということで、自作して授業で実際に使っていた「英熟語集」をまとめて出版社に持っていったのが最初です。

英語が嫌いな人に本書を読んでほしいと語る著者
英語が嫌いな人に本書を読んでほしいと語る著者

――そもそも、先生と英語との出会いはいつだったのですか?

 小学生のときにまで遡りますが、実は私は、小学生の頃はどの科目もクラスでほぼ最下位という超落ちこぼれでした。6年生のときに、担任の先生から「このままじゃまずいぞ」と言われて自分なりに努力したのですが、やっぱり成績は上がらなかった。それまで6年間の積み重ねがまったくないのですから、当然ですよね。
 そんなとき、中学生の姉から、中学からはじまる「英語」という教科があることを聞いて。これなら一から勉強できると思い、興味を持ちました。そこで、生まれて初めて母にねだって500円を用意してもらい、近所の本屋で英会話の本を買ってずっとそればかりやり続けたんです。
 ですが、中学に入って最初のテストでは100点を取れませんでした。というのも、国語が苦手で漢字も全然読めなかったので、問題文の意味がよく理解できなかったんですよね。それで、まずは日本語の基礎から勉強しなくちゃいけないなと気づきました。

――そんなご経験があったのですね。今後、小学校の英語教育がはじまりますが、英語の早期教育についてはどう思われますか?

 はっきりこうだという答えは持っていないのですが、自分の経験を振りかえって色々と考えてみると、日本語などの基本がしっかりしていなければ、英語を始めてもそれほど身につかないんじゃないかなと感じます。たとえば発音面だけならば、早ければ早いほどいいのですが。

――確かにそうかもしれません。では、本書はどういう人に読んでほしいですか?

 もちろんメインターゲットは、英検やTOEIC高得点を目指す人や大学受験生なのですが、英語にアレルギー反応を起こしてしまうほど苦手だったり嫌いだという人にも読んでほしいですね。
 基本的に、語源で英単語を覚える本というのは、ある程度の力を持った人でなければ読めないもの。ですが、本書はイラストをたくさん入れ、語根の部分の解説などをできるだけわかりやすくし、“勉強感”をなくしたので、英語が苦手な人たちにもきっと使ってもらえるのではないかと思っています。
 最初の内はパラパラめくる程度で、そのうちに気に入ったイラストを見つけて、ついでにその周辺も見てみる……という感じで何回か見ているうちに、少しずつアレルギーが薄れて、英語が楽しくなっていくのではないかと思います。

――最後に、先生のオススメの本を教えてください。

 昔、明治大学の教授だったマーク・ピーターセンの著書『心にとどく英語』(岩波新書)です。彼の古典的な名著で『日本人の英語』というのがありますが、その次に出た本で、1999年出版ですが、まだ絶版になっていませんね。
『日本人の英語』は、英語を“書く”こと“読む”ことを中心に書かれた本ですが、こちらは“話す”ことに日本人がどうしたら興味を持てるかといったことが書かれていて、難しくはなく、親しみやすい内容です。20年ほど前にこの本を読んだとき、「ああそうなんだ」とうなずける部分がたくさんあって、同時に「ああ、自分もこういう本が書けたらいいな」と思いました。私が本を作るきっかけになった一冊です。

――本日はありがとうございました。「英単語の語源図鑑」続編も楽しみにしています!

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【著者プロフィール】
清水建二
東京都浅草生まれ。埼玉県立越谷北高校を卒業後、上智大学文学部英文学科に進む。卒業後は、ガイド通訳士、東進ハイスクール講師、進学の名門・県立浦和高校などを経て、現在は埼玉県立白岡高校教諭。基礎から上級まで、わかりやすくユニークな教え方に定評があり、生徒たちからは「シミケン」の愛称で親しまれている。本作では、文章を担当。著書は、シリーズ40万部突破の『英会話1秒レッスン』、累計10万部突破の『新編集 語源とイラストで一気に覚える英単語』(以上、成美堂出版)、『増補改訂版 連想式にみるみる身につく 語源で英単語』(学習研究社)、『イメージと語源でよくわかる 似ている英単語使い分けBOOK』、『イメージでつかむ 似ている英語使い分けBOOK』(以上、共著・ベレ出版)など70冊を超える。趣味は海外旅行、食べ歩き、ジョギング。2017年4月より、朝日ウィークリーでコラムを連載中。『英単語の語源図鑑』(かんき出版)は、すずきひろし氏とイラストレーター本間昭文氏との共著。

かんき出版
2018年8月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

かんき出版

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