小泉今日子×本木雅弘・対談 私たちのあの頃

対談・鼎談

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黄色いマンション 黒い猫

『黄色いマンション 黒い猫』

著者
小泉 今日子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784101034218
発売日
2021/11/27
価格
572円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

小泉今日子×本木雅弘・対談 私たちのあの頃

[文] 新潮社


小泉今日子×本木雅弘

1982年に歌手デビューし、アイドルとして同時代を駆け抜けた小泉今日子と本木雅弘。同じ立場にいた二人がアイドル時代を振り返りながら、当時感じていた葛藤や忙しくも貴重な経験となった仕事、生卵事件の真相などを語り合った。

生卵ぶつけられ「ふざけんな!」 小泉今日子と本木雅弘が明かした事件の真相とアイドル時代の苦悩とは?

※本記事は小泉今日子さんのエッセイ集『黄色いマンション 黒い猫』の文庫化記念に俳優の本木雅弘さんと対談した内容です。また、本対談は雑誌「SWITCH」(2021年12月号)の「原宿百景」との連動企画となっています。

小泉今日子×本木雅弘・対談「私たちのあの頃」

小泉 本木君と私は、生まれた年は違うけれど同学年で、歌手デビューしたのも同じ一九八二年。

本木 小泉さんが三月で、僕たちシブがき隊が五月。その年は他にも多くのアイドルがデビューをしたので、“花の82年組”なんて言われてますね。

小泉 初めて会ったのは、レコードデビューする前の年でお互いにまだ十五歳だったから、知り合ってもう四十年にもなるんだ!

本木 ホント! 随分と長い付き合いになりますね。デビューしてからの数年間は、テレビの歌番組やイベントなどでよく共演していたから、私たちはいつも近くにいる存在でした。けれども案外、その頃の小泉さんについて知らなかった部分があったんだなと、エッセイ集『黄色いマンション 黒い猫』を読んでみてわかりました。

小泉 この本は、雑誌「SWITCH」の連載「原宿百景」に綴ったエッセイをまとめたもので、書き始めた二〇〇七年当時、私は四十代になったばかりだった。その時の私が、過去を振り返ってみたり、今、感じていることを、自分なりの文章で、少し長い時間をかけて書き続けてみようと思って始めたの。原宿を主題におきながら、でもそれだけではなくて、幼い頃の記憶、十代のまだ何者でもなかった少女時代の思い出、デビューしてからの日々、そして、現在の自分。私が生きてきたこれまでを、いろいろな時間軸の中で、実際の出来事やその時の気持ちを思い起こしながら書いてみたんです。

本木 ここに綴られているのは、小泉今日子という人が過ごしてきた時間であり、個人的な感情ですよね。けれど私は、まるで自分ごとのように感じながら読みました。原宿での出来事もそうだし、家族とのエピソードや、昭和の黒電話、あの時代の同級生たちの雰囲気、それはおそらく、小泉さんと私が同い年だからだろうと思ったんだけれど、我々より十歳下である私の妻も、同じように共感できると言って、涙を流しながら読んでいました。だから時代の感覚というだけでなく、誰が読んでも何か心に響くものがあるんですよね。太宰治の『人間失格』を読むと、ああ、自分のことを書かれているようだ、と皆が感じるでしょう。文章の種類としては違うけれど、読後感はあれと同じなのではないかな、と。小泉さんらしい、シンプルで軽快な言葉で綴られているんだけれど、情緒の伝わってくる素晴らしい文章でした。

小泉 わあ! そんな風に言ってもらえるなんてすごくうれしい。

本木 小泉さんは昔から、見つめた何かを自分の言葉にして表すことが得意でしたよね。十代の頃から読書好きだったことも、きっと影響しているんでしょうね。いつだったか、何かの用事で小泉さんに電話をしたら、「今、『モモ』を読み終わって放心してるから……」って、電話口でダマられたことがありました(笑)。

小泉 あははは! そんなことあったっけ。高校を中退してから勉強が好きになって、本を読むことにも夢中になっていたの。ドラマやCMの撮影現場へもいつも何冊か持っていって、空き時間ができると本を開いてた。

本木 とにかく本好きのイメージがあって、当時から、同世代の他の子たちとはどこか違う落ち着きを感じてましたよ。

新潮社 波
2021年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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