『謎解きはディナーの後で』の東川篤哉 最新刊は、架空の街「烏賊川(いかがわ)市」シリーズ

エッセイ

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スクイッド荘の殺人

『スクイッド荘の殺人』

著者
東川篤哉 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334914592
発売日
2022/04/20
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

烏賊川(いかがわ)市長からの挨拶 『スクイッド荘の殺人』著者新刊エッセイ 東川篤哉

[レビュアー] 東川篤哉(作家)

「皆様、ようこそお集まりいただきました。烏賊川市長の東川(ひがしがわ)です。この度、我らが烏賊川市はめでたく市制施行二十周年の節目を迎えることとなりました。これもシリーズを応援してくださった市民の皆様のお陰であると深く感謝いたします。有難うございました。

 思い返せば二十年前、自身初の長編ミステリを執筆するに当たって、『実在する街を舞台にしたら、現実の地理に制限されちゃうから書きづらいなぁ。そうだ、いっそ架空の街を作っちゃえ!』と安易に考えて、でっち上……いや、作り上げた街。その街を当時の私は、面白いと思って、敢えて烏賊川市と名付けました。いまにして思えば、何が面白いのかサッパリ判りません。ともかく、そうして完成した『密室の鍵貸します』は見事カッパワンに入選。ここに烏賊川市は産声を上げたのでありました。しかし誕生からしばらくの間はヒット作に恵まれず、市の財政状況は火の車。市長としても『やはりネーミングが拙(まず)かったのか……』と弱気になったそのとき、神風が吹きました。烏賊川市から遠く離れた東京は国立市を舞台に、『謎ディ』とか何とかいう作品が大ヒット。関係のない烏賊川市にもスポットライトが当たり、過去作が大増刷。市民の数は一気に膨れ上がり、『私の嫌いな探偵』は、なんとドラマ化もされました。俗に「烏賊川バブル」と呼ばれる時代でございます。

 そんな烏賊川市を舞台に、この度、久々の長編が刊行される運びとなりました。タイトルは『スクイッド荘の殺人』。もちろん市制施行二十周年に合わせた記念刊行です。三年も前に連載を始めたものが、なかなか完成せず、結果的に節目の年に出ることになった―とか、そんなんじゃありませんから。最初から狙いすました二十周年記念刊行物ですから! ま、事の真相はともかくとして、とりあえずいまはシリーズ最新作の刊行と市制施行二十周年とを、市民の皆様とともに慶(よろこ)びたいと思います。ご清聴、有難うございました」

光文社 小説宝石
2022年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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