『大相撲の不思議2』
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<東北の本棚>力士と勝負の秘話満載
[レビュアー] 河北新報
女性初の横綱審議委員として活躍した脚本家が、力士や勝負の知られざる日常に切り込む「大相撲の不思議」の第2弾だ。著者ならではの軽妙な文体で、大相撲にあまり関心のない人でも、伝統の世界に気軽に親しむことができる一冊。行司や相撲部屋、巡業など、約30のキーワードごとの解説で構成され、どこからでも楽しく読める。
全編で、著者の豊富な知識と経験に基づくトリビアが満載だ。例えば、力士が土俵に塩をまく理由。東北大相撲部監督に就任した当時の実感を交え、前の勝負の熱気を鎮め「聖空間」をつくる意味などを説く。
相撲部屋での暮らし、外国人力士がどのように日本語を身に付けているかといった素朴な疑問にも答える。力士たちが取組の前後などに羽織る「泥着(どろぎ)」の独特のまとい方など、通ならではの解説もあり、一読すると、観戦の楽しみも増えそうだ。
勝負を判定をする行司、力士のまげを結う床山など、大相撲を支える人々の日常も紹介され、興味深い。特に、行司の仕事の幅広さには驚かされる。力士名や所属部屋、出身地の紹介といった場内アナウンスなどに加え、翌日の対戦力士を記して観客に示す「顔触れ」や、毎場所の番付を書くのも行司だという。いずれも独自の書体「相撲字」で書く必要があり、行司は入門と同時にみっちり練習する。役割は多く、大相撲の裾野の広さ、奥深さを感じさせられる。
著者は1948年秋田市生まれ。大相撲ファンになった発端は、幼稚園でいじめられ、体の大きな同級生に助けられたことだという。人生の歩みも記され、大相撲愛に納得がいく。力士のオーバーワーク防止、けがで休場した翌場所は全休しても番付が落ちない「公傷制度」の重要性も指摘し、力士への深い愛情も伝わってくる。(春)
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潮出版社03(3230)0781=880円。