芥川賞を今年受賞した著者のデビュー作が文庫化された。婦人科系の病気がある「わたし」は、同居する郁也とはセックスレスとなっている。ある日、郁也が金を払ってセックスしていたミナシロという女性が妊娠したことを知らされる。ミナシロは、わたしと郁也に子供を育ててほしいと持ちかけるが―。
子供のいないアラサー女性の複雑な気持ちが、これでもかと描かれる。女性が子供か仕事かの選択を迫られたのは今や昔、生き方の選択肢が増えた分、悩みも多様で深くなっており、現代女性の生きづらさが伝わってくる。(高瀬隼子著、集英社文庫・550円)
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2022年9月4日 掲載
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