他人が許せない人こそ、覚えておきたい「許し方」と許すメリットとは?

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許す生き方

『許す生き方』

著者
岩本 元熙 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
哲学・宗教・心理学/哲学
ISBN
9784344937079
発売日
2022/09/13
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

他人が許せない人こそ、覚えておきたい「許し方」と許すメリットとは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「君子は諸(これ)を己に求め、小人は諸を人に求む」(「はじめに」より)

許す生き方』(岩本元熙 著、幻冬舎)の冒頭には、孔子とその弟子たちの問答をまとめた名著『論語』の一説が引用されています。

学識・人格共に優れた立派な人(君子)は自分の身に起きたことを誰かのせいにせず、自分に責任を求める。しかし凡庸な人(小人)は、失敗を他人のせいにして反省しないという意味。

つまり、すべての行動の責任を自分でとり、反省を繰り返すことによって人は成長できるということです。とはいえ、それはなかなか難しいことでもあるでしょう。なぜなら「自分の責任だ」と受け止めるためには、相手を許すというステップが必要になるから。

本当の意味で怒りや悲しみから解放されて前に進むためには、相手の非を責めるだけでなく、相手の立場や気持ちにまで想像力を働かせて、相手を許すということが肝心です。しかし、自分に害を与えた他人を許すことはなかなかできません。(「はじめに」より)

そこで、人生が思うようにいかないと感じている人、過去の出来事に縛られて前に進めないでいる人、そして自分自身をさらに成長させて充実した人生にしたいと思っている多くの人たちの背中を押すために本書は書かれているのだそうです。

きょうはそのなかから、第2章「怒りの感情に流されず一歩引き下がり、自分の心と向き合う 自分のことも相手のことも『許す』ことで人生を好転させる」に焦点を当ててみたいと思います。

「許す」という視点がもやもやした人生を好転させる

仕事や人生に夢を持てない人、生きがいややりがいを感じられない人は、自分が自覚していないレベルで、なにかに対してずっと憤りを感じているのではないか?

著者はそう指摘しています。そのような思いが現実に対する不平不満となり、「もう世の中には期待しない」という態度を育ててしまっているのだと。

しかも多くの場合、そういった思いの発端は「自分が不当な扱いを受けた」という経験だったりもします。そのため、どこかスッキリしない状態、生きていてもおもしろくないという感覚が続いてしまうというのです。

たしかに誰にでも、他人になにかをされたりいわれたりして不快な気分になった経験はあるもの。思い出すと、いまだに頭がカッとなったり体が熱くなったり、荒っぽい感情が蘇ってくるようなこともあるかもしれません。それらは、普段は意識しないようにしているだけで、本当はまだ怒り続けている出来事だからです。

いってみれば、そういったことをきちんと消化しきれていないから、毎日が少しずつつまらなくなってしまうということ。では、そういった経験を正しく消化するにはどうすればよいのでしょうか? 著者によれば、それが「許す」というあり方につながっていくのだそうです。

思い出した出来事は、どれも簡単には割り切れないものばかりかもしれません。しかし、あえて許していくことで人生は好転していくというのです。

それは許すことで、自分にとって嫌な出来事→自分がこんな扱いを受けていいはずがないという怒り→怒りを忘れるための都合のいい解釈→世間や周囲への諦め、という流れを遡り、自分にとって嫌な出来事を怒りの原因でなくすることができるからです。(36ページより)

たとえば上司の指示に従って作成した書類を叱責とともに突き返されたら、心のなかで舌打ちをし、「指示どおりやったのに納得できない」「部下のことをろくに理解していない」というように、その上司のことを蔑む思いを抱くかもしれません。

しかし、それは怒りを怒りのまま吐き出しているだけのことなので、事態は進展するはずもありません。それだと相変わらず上司は自分にとって「無能で嫌なヤツ」のままですし、自分自身も「上司からいわれのない叱責を受けている」という関係性を消し去ることができていないわけです。

そこで著者は、自分に牙をむいた上司を許してみたらどうなるかと考えてみることを勧めています。(34ページより)

「許す」の第一歩は「怒るのをやめてみること」

そんなことは絶対無理だと思う人は、もしも許すとしたらと考えてみます。自分自身はこんな上司を許すことはできないが、それでも仮に許すとしたらどんな思いが生まれてくるだろうかと、仮定法で検討してみるのです。

ここでの許すは怒ることをやめてみるというふうにとらえるだけでも構いません。怒るのをやめるということは、その出来事やその上司を拒絶することをやめてみるということです。(37ページより)

その結果、「上司がそこまで叱責するのは、なにか理由があったからなのではないだろうか?」という考えに変わる可能性が生じるわけです。

「ひょっとしたら家庭でなにか心配事があってイライラが蓄積しているのかもしれないし、あるいは別の誰かとくらべて自分に不満を感じているのかもしれない」というように。また、気づいていないだけで、実は自分に非があったというケースもあるかもしれません。

ともあれ具体的なことをイメージしてみると、上司が自分を叱責する理由をいろいろと思いつくことができるわけです。

大切なのは、上司の叱責という嫌な出来事をそのまま受け取って怒るのではなく、「なにか理由があるのかもしれない」と思ってみること。そうやって許すことを意識してみると、「もっと自分にできることはなかっただろうか?」というようにフラットに考えることができるのです。

つまり、怒ることをやめ許してみようと意識することで上司のせいにして嫌な出来事をやり過ごすのではなく、自分の行動や物言いや作業の仕方などに原因はなかったかと自分が改善すべき点について考え始め、二度と同じようなことが起きないようにするための取り組みを始めることができると思います。(38〜39ページより)

もちろん、最初からうまくいくとは限らないかもしれません。しかし、結果的には相手や状況に対する想像力が高まっていくはず。そして相手に寄り添う度合いも高まって、ネガティブな空気をその場で解消することすらできるようになるだろうと著者は述べています。(37ページより)

著者が本書を通じて訴えようとしているのは、「許す」という行為がいかに自分を成長させてくれるか。そのため、許すことができる自分になるためのヒントも意識的に示しているのだといいます。本当の意味で成長するために、そんな本書を参考にしたいところです。

Source: 幻冬舎

メディアジーン lifehacker
2022年10月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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