<東北の本棚>漫画の聖地 魅力伝える

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トキワ荘マンガミュージアム : 物語のはじまり

『トキワ荘マンガミュージアム : 物語のはじまり』

著者
平凡社
出版社
平凡社
ISBN
9784582635263
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>漫画の聖地 魅力伝える

[レビュアー] 河北新報

 登米市出身の石ノ森章太郎さん(1938~98年)や手塚治虫さん(28~89年)ら日本を代表する漫画家が若手時代に住み、切磋琢磨(せっさたくま)した東京都豊島区にあったアパート「トキワ荘」。その伝説のアパートが2020年、38年ぶりに忠実に再現され、同区南長崎の公園にトキワ荘マンガミュージアムとしてよみがえった。本著には施設の見どころや個性的な漫画家の人間群像、回想録、地域住民の声などを収め、夢に向かい創作に打ち込んだ若き漫画家たちの息吹や漫画文化の奥深さが伝わってくる。

 トキワ荘は老朽化で1982年に解体されたが、地元住民の熱意で再現計画が進んだ。施設1階には企画展示室のほか、手塚さんが漫画などを描いた解体前の天井板を陳列。住人だった漫画家の作品など1500冊所蔵のラウンジがある。2階は常設展示で当時の4畳半の居室などを公開。復元された石ノ森さんの仕事場には、海外ミステリー小説や映画雑誌が所狭しと並ぶ。

 本著ではトキワ荘をリアルに体験する10のポイントを収録。木製の開き戸やふすまの柄、階段の音などを細部にわたって再現した際の逸話が紹介されている。

 施設の魅力を伝えるカラー写真のほか、往時に住んでいた気の置けない漫画家たちのスナップ写真を随所に盛り込み、タイムスリップした気分になる。

 トキワ荘には、兵庫県宝塚市から上京した手塚さんが1953年に入居して以降、いずれも故人の藤子・F・不二雄さんや藤子不二雄(A)さん、赤塚不二夫さんら漫画家やアニメーター11人が入れ替わり住んだ。本著には型破りな交流ぶりやトキワ荘を題材にした手塚さんらの貴重な漫画も収録され、このアパートが漫画愛好者の「聖地」であったことを実感させられる。(沼)
   ◇
 平凡社03(3230)6573=2200円。

河北新報
2022年11月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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