世界的ベストセラー サミュエル・スマイルズ『自助論』から学ぶ「もっとも大切なこと」

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世界的ベストセラー サミュエル・スマイルズ『自助論』から学ぶ「もっとも大切なこと」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

『自助論』はイギリスの著述家でありジャーナリストでもあったサミュエル・スマイルズ(1812-1904年)が、今から165年前(1858年)に出版した世界的ベストセラーで、今でも世界中で非常に多くの読者に読まれ続けている自己啓発書の白眉とも呼ぶべき名著です。(「編訳者まえがき」より)

超訳 自助論 自分を磨く言葉 エッセンシャル版』(サミュエル・スマイルズ 著、三輪裕範 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の冒頭に、編訳者はこう記しています。

英語のみならずフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、アラビア語、トルコ語など多くの外国語に翻訳され、明治4年(1871年)に中村正直の翻訳によって『西国立志論』というタイトルで日本でも出版されることに。福沢諭吉の『学問のすゝめ』とともに、明治初期の青年たちから熱狂的な支持を受けたのでした。

その理由は、『自助論』(および『西国立志論』)に通底するテーマや思想が、西洋列強に負けないような立派な国をつくり上げていこうとした当時の日本人の時代精神と合致したから。

では、『自助論』全編に通底するテーマとは何なのでしょうか。

それは冒頭に出てくる「天は自ら助くる者を助く」という有名な言葉に象徴される自立独立の精神です。スマイルズはまさに、この言葉の正しきを例証するためにこの本を書いたといってもいいぐらいです。(「編訳者まえがき」より)

『自助論』で紹介されているのは、有名無名を問わず、社会のさまざまな分野で成功した人々に関する興味深いエピソードなどの数々。それらを1ページ1テーマにまとめた本書のI「自助の精神」のなかから、いくつかを抜き出してみることにしましょう。

自分で努力してこそ成長できる

「天は自ら助くる者を助く」(001より)

スマイルズによればこれは、いままでに人類が経験してきたあらゆる成功と失敗の体験を凝縮したことば。そこにはまさに、人類の英知が刻まれているのだといいます。つまり安易に人に頼ることなく、“自分で努力する”という自助の精神こそが、人と国家を成長させるということ。(001より)

自助の精神は無名の人々によって受け継がれる

世の中において大きな貢献をしてきたのは「無名の人々」。名もなき人たちが毎日勤勉に働き、品行方正で実直な生活を送ることは、周囲の人々へのまたとないお手本となり、後世まで国の発展に大きく貢献することになるということです。

なぜなら、自助の精神に基づいた勤勉で実直な生活態度や人生観は、自然とまわりに伝わるものだから。したがって誰もが自助の精神を持って暮らしていけば、幸福な社会ができるはずだという考え方なのです。(006より)

学校教育で学べるのは、ほんの初歩

仕事をはじめ日々の体験から得られるものは、どれだけ素晴らしい学校教育から得られるものよりも遥かに優れている。スマイルズはそう述べています。

学校の教育は、毎日の実体験から学べることにくらべると“ほんの初歩のこと”にすぎないのだと。

家の中、街の通り、工場や農場、会社の中などで日々起こっていることを通じて学ぶことをドイツの作家シラーは“人類の教育”と呼んだが、こうした実際の経験から学ぶことこそが最も大切なのだ。(007より)

ちなみにシラーは『群盗』『ヴィルヘルム・テル』などの代表作を持つドイツの劇作家・詩人。ゲーテと並び、ドイツの国民詩人と称えられています。(007より)

意志さえあればなんでもできる

多くの場合、困難は逆に、人を助ける最大の援助者になるものだそう。なぜなら人生における困難は、労苦に耐える力を呼び起こしてくれるものだから。さらには、そうした困難に直面しなければ眠ったままになっていたかもしれない能力を目覚めさせてもくれるから。

事実、障害を乗り越えて勝利を得た例は歴史上にも少なくありません。そして、そのことを見事に表現しているのが、「意志さえあればなんでもできる」ということばだということです。(012より)

勤勉に働く手と頭が富と成功をもたらす

人の優劣は、どれだけ精一杯努力してきたかによって決まるもの。どんな分野にしても、怠けていてはよい結果など得られるはずもないわけです。

そして、富と成功を得るために必要なことはたった2つしかないとスマイルズはいいます。それは、勤勉に働く手と頭なのだと。自分を磨き、知性を向上させ、ビジネスで成功するには、この2つが不可欠だということ。(013より)

人格は小さなことの積み重ねでできている

人格とは、数多くの細々としたことによって形づくられているもの。たとえば、昔の人々が行った模範となるさまざまな行動、人生における実体験や文学、友人や隣人、さらには祖先の精神や現在生きている社会などなど。

それらすべての遺産を、私たちはただ継承するだけでなく、それらから大きな影響を受けているということです。(022より)

著者によれば、現在出版されている自己啓発書の多くは、基本的には『自助論』の内容を焼きなおしたものなのだとか。だとすれば『自助論』は、自己啓発書の元祖だともいえそうです。だからこそ、「勤勉」「努力」「忍耐」「誠実」などの重要性を説いた『自助論』のエッセンスを、本書から学び取ってみたいところです。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2023年3月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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