医師でもある著者が新刊の舞台に選んだのは、患者が自国より高い水準の医療を求め渡航する「医療ツーリズム」で成長したクリニック。先進医療の光と闇を描く。
外科医の才所が運営する海外富裕層向けの自由診療クリニックは最先端のがん治療で実績を上げていた。だが、顧問の不審死や巨額の治療費に対して世間の批判を浴び、足元から揺れ始める。
医療ツーリズムは国際貢献か、経済格差が命の選別につながる危うい一手か。登場人物たちの主張から浮かび上がる医療システムの功罪に顧問の死の真相が絡み、スリリングな展開に引き込まれる。(角川書店・1870円)
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2023年4月2日 掲載
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