シンプルに生き、仕事も人間関係もうまくいく「機嫌をデザインする」メリットとは?

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機嫌のデザイン

『機嫌のデザイン』

著者
秋田 道夫 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784478117323
発売日
2023/03/30
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

シンプルに生き、仕事も人間関係もうまくいく「機嫌をデザインする」メリットとは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』(秋田道夫 著、ダイヤモンド社)の著者は、多くの実績を持つ高名なプロダクトデザイナー。

「ことば」を大切にしている人物でもあり、20年以上続けてきたブログに次ぎ、2011年3月からはツイッターで「自分の思ったことや感じたこと」を発信し続けています。

そこに込められた「シンプルで本質をとらえたことば」がいかに多くの人に響いたかは、11万人というフォロワー数からも想像できるはず。

決して難しいことを書いているわけではないけれど、いや、シンプルだからこそ、悩みや焦り、気負いを抱えている多くの人々に届き、共感を得ているわけです。

ある日のツイートでこんなことを書きました。

「別に前向きではありません。ただ機嫌がいいだけです」と。

わたし自身「機嫌がいい」というのは子どもの頃からそうなので、まったくなんの意識もないのですが、あるトークショーに来てくださった方がSNSで「秋田さんは今日も機嫌がよかった。機嫌がいいというのはデザインという仕事においても重要なことだと感じた」といってくださったのを見て、自身も「機嫌がいいというのはどうも価値があることのようだ」と意識するようになりました。(「はじめに」より)

その日から、「機嫌」「機嫌よく」がツイッターの重要な骨子になったのだとか。そして、そこから誕生したのが本書。会話文形式により、ツイッターでは語られてこなかった「まわりに左右されないシンプルな考え方」が紹介されているのです。

この本を読んだからといって明日から仕事がうまくいくとか、成功するとは思いませんが、日常生活で必要な機嫌についての感受性や、自分と周囲の関係性に潤いを感じられるようになるかもしれません。(「はじめに」より)

きょうはそんな本書の3章「仕事をデザインする」をクローズアップしてみましょう。

劣等感は優越感の裏返し

著者は、大学卒業後にインハウスデザイナーとして11年ほど会社勤めをしてから独立されたという経歴の持ち主。ここでは、「会社員だったころと現在とで、『仕事』や『働く』に対する向き合い方は変わったかと問われ、「率直に答えてしまいますと、まったくといっていいいほど変わっていないと思います」と答えています。

会社員の頃は、身分としてはたしかに会社に所属していましたが、気分としては“社内個人事務所”の看板を掲げているようなスタンスでいました。

自分ができること、貢献できることを、会社の中の求められる場所で使ってもらって、給料をいただく。自分の生産価値が果たしてきちんと機能しているのか、給料に見合った仕事ができているのかという点をいつも気にしていました。(「113ページ」より)

逆にいえば、「もしなにか失敗してしまったとしても、こんなわたしを雇ったほうが悪い」と開きなおってもいたのだとか。そんな自分のことを、「臆病なくせにそのころは大胆だった」と振り返っています。

そればかりか、自分のやりたいこと、できることが、会社の基準のなかで評価されるかどうかとか、まわりとくらべてどうかなどは、あまり考えて悩んだことはなかったともいいます。

そもそも学生時代から「人の真似をしてうまくなろう」と思ったことはなく、まわりが優秀なので劣等感に陥ったということもなかったというのです。

ただしそれは、まわりが気にならないほど優秀だったという意味ではないようです。「まわりが優れているに決まっている」と最初から思っていたということ。

ようは、「自分はたかが知れている」と期待をしない。自分自身に過度な期待をかけないのです。

期待をしなければ、失望したり、余計に傷ついたりすることもありません。

劣等感を抱くのは、「優秀だろう」という目算があった証拠ですね。

つまり、劣等感は優越感の裏返しだとわたしはとらえています。

優越感を抱かないから、劣等感も抱かない。

ただフラットに、水平な目線で会社という社会の中に立っていました。(115ページより)

ちなみに会社を辞めて独立してからも、ご自分のことを「事務所の代表ではなく複数の会社員」だと思っているのだそうです。

会社の規模と関係なく、自分の関わる会社はすべて大事にしたいからこそ、どこかを特別扱いすることなくフラットでいたいという考え方。(112ページより)

社歴も肩書きも、人付き合いには関係ない

著者は会社に入って半年経ったころ、社内の清掃をされていた奥さんたちから「アキタくん、今度、秋の慰安旅行に行くんだけれど、一緒に来ませんか?」と誘われたことがあり、それが会社員時代の「これが一番だと思える自慢」なのだそうです。

当時はなんとも思わなかったものの、歳月が経つほどにそのことが「特殊」であり「特別」なことに思えてきたというのです。

誰に対しても「おはようございます」「失礼します」と、愛想よく挨拶をしていたのがよかったのでしょうが、それにしてもすごいことですね。(137ページより)

話しかけやすい雰囲気を出していたという自覚こそなかったものの、「デザイナーだからステータスが高い」などとは思ってもいなかったからこそ、親近感を持ってもらえたのではないかと考えているそうです。

常に変わらないのは大切なことですね。どこの会社に入ってもどんな立場にたっても同じスタンスでいてほしいものです。

逆にいえば「それなりの立場」になる自分を想像して、そこから今の自分の有り様を導き出すのがいいかもしれません。(138ページより)

なるほど、そんな未来を描くのも悪くはありません。(136ページより)

「あまり過剰な期待はしないで読んでいただければ幸いです」と著者は記していますが、機体の度合いはともかくも、読み進めていくと心が楽になっていく可能性は大いにあります。

拭いきれない悩みや不安がある方は、「期待せずに」読んでみてはいかがでしょうか?

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2023年4月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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