40代から始まる脳の老化は「前頭葉」のトレーニングで防ぐ!気をつけたい5つの習慣とは?

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不老脳

『不老脳』

著者
和田 秀樹 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784106109935
発売日
2023/04/17
価格
836円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

40代から始まる脳の老化は「前頭葉」のトレーニングで防ぐ!気をつけたい5つの習慣とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

現代社会において、40代・50代は間違いなく「若い世代」。日本全体の平均年齢が上がっているなか、老人の仲間入りをさせてもらうには早すぎるわけです。

ところが『不老脳』(和田秀樹 著、新潮新書)の著者によれば、どれだけ「自分は若い」と思ったところで、脳科学的にはそうもいかないようです。なぜなら、脳の老化は40代でとっくに始まっているから。

なかでも深刻なのは、前頭葉の老化なのだとか。前頭葉が老化すれば、当然ながら個人としての活動レベルが落ちます。そればかりか、そうした人たちが増えれば日本全体の活性が落ち、沈滞を招くということです。

前頭葉の役割は多岐にわたります。運動するときや言葉を操るとき、泣いたり笑ったりするときに働くのが前頭葉です。

前頭葉はさらに「前頭連合野」「ブローカ野」「運動前野」「補足運動野」「前頭眼野」「一次運動野」に分けることができるのですが、それぞれに高度な機能を担っています。

中でも「前頭連合野」は思考や判断といった情報の処理や、集中力や意欲、情動のコントロール、創造性や計画性、社会性といった“人間らしさの源泉”とも言える役割を担います。

前頭葉の機能がすべて解明されているわけではありませんが、前頭葉とはいわば、人間の“知性”そのものを司ると言い換えてもいいかもしれません。(15〜16ページより)

たとえば「老人は怒りっぽい」などといわれますが、年をとると怒りっぽくなるのではなく、前頭葉の機能である「情動のコントロール」がうまく働かなくなると考えられるそうなのです。つまり、怒りの感情が湧いたときに「ブレーキが利かなくなる」ということ。そう考えると、老人に限らず「キレやすい」人が増えたように感じることにも納得がいきます。前頭葉が正常に機能していれば、自分の社会的立場や置かれている状況、トラブルの対処法なども脳裏に浮かび、怒りの感情は抑制できるはずなのですから。

「あおり運転」にも前頭葉が影響?

人の感情は大脳辺縁系という、前頭葉よりずっと奥、脳のもっとも内側にある深い領域で生起されます。その感情に対して、これまでの経験や知識を動員して、行動にブレーキをかける役割を果たすのが前頭葉です。(28〜29ページより)

ところが前頭葉の機能が低下すると、経験や知識がむしろ「なぜこうならないんだ」というような怒りや悲しみを強化してしまうことになるのです。

前頭葉には洞察力という「隠れたルールを見出す」「突然ルールが変更されたことに気づく」機能もあるそうですが、それが働いていないと「こんな発言はまずい」との判断も働かなくなるわけです。

そのため沸き立つ感情を抑えられなくなってしまうということで、近年多い「あおり運転」などもそれにあたるようです。あおり運転をして捕まれば、運転免許は取り消されるでしょうし、3年以下の懲役か50万円以下の罰金です。そればかりか、周囲の見る目も変わるでしょう。

それがわかっているのに抑制が利かないとしたら、通常の脳の働きとはいえないということ。「感情をコントロールする司令塔としての前頭葉は、きちんと機能していないのではないか」と疑わざるを得ないのです。

感情のコントロールが難しい人が増えています。

しかもそれが若者に限らず、いい年をした大人や老人にも一定数いる社会が現実です。その一方で、わたしたち日本人はすでに半数以上が40代後半以上で、40代以上は6割を超えます。

そこに、「早い人なら40代前半から前頭葉の老化が始まる」というファクトを加えると、ゾッとするような結論が見えてこないでしょうか。「6割の日本人が前頭葉の機能不全に陥っているのかもしれないという現実です。(32ページより)

事実、知性にあふれ、記憶も確かで計算も速く、時事にも明るく発言も根拠に基づいてしっかりしているという人でも、実際に調べてみると前頭葉だけが縮んでいるということが珍しくないのだそうです。(28ページより)

前頭葉は鍛えられる

だとすれば、なんとかしたいところ。しかし一般的に、さまざまな原因によって萎縮した脳がもとに戻ることはないというのが現代医学の認識であり、前頭葉も同じ。とはいえそれでも、脳を刺激し、脳内の血流を促進することは重要であるはずだと著者は述べています。

新しい経験などによって脳が活性化されると、ニューロンとニューロンのつなぎ目であるシナプスが増えることは知られています。こうした回路が増えれば神経伝達物質の放出量も増え、情報をたくさん伝えられ、受け取れる、つまり脳をより活性化させられるという好循環を生み出せるはずです。一方で、こうした回路も使わなければ失われていくということもお伝えしておいた方がよいでしょう。(65ページより)

では、そのためには具体的になにをすればよいのでしょうか?(64ページより)

前頭葉を鍛える5ヶ条

脳を活性化させるには、前頭葉を鍛えるべき。著者はそのための方策を、「前頭葉を鍛えるための5ヶ条」として紹介しています。それぞれを確認してみましょう。

1.「二分割思考」をやめる

他人の意見に流されず、自ら調べて自分の頭で考え、答えをひとつに決めつけないという考え方。世の中や「正解」は変わっていくものですし、一度賢くなったからといってずっと賢いわけでもありません。そこで、思考にグレーゾーンを設けるべきなのです。(72ページより)

2. 実験する

「二分割思考」から解放されたら、「答」を得て満足せず、ルーティンを避けてさまざまな「初体験」を求めて実験してみるべき。対象はなんでもOKで、フットワークの軽さが重要。(75ページより)

3. 運動する

身体活動抜きに脳の血流だけを活発にするには限界があるため、(昆虫採りでもラーメン屋巡りでもいいので)体を動かすことが大切。前頭葉の活性化のためにも、ぜひ心がけたいことだといいます。(85ページより)

4. 人とつながる

孤独は脳の老化を促進しますが、その一方、人を思いやる感情は前頭葉の重要な役割。人とのつながりはソーシャルスキルをも育みますし、そもそも他人ほど予想のつかない存在はありません。そんな他人と過ごすことにより、前頭葉が働くわけです。(88ページより)

5. アウトプットを心がける

インプットしたものをただ「再生」するのではなく、「加工」してアウトプットすることも重要。「人とつながる」ためにも、前頭葉をフルに使ってアウトプットすることを心がけてみるべきだということです。(91ページより)

先にも触れたとおり、ポイントは40代から前頭葉の老化が始まるという事実。だからこそ、そこから目を背けずに現実を受け入れ、前頭葉を活性化させながら「よりよく生きるための術を模索すべきなのでしょう。

Source: 新潮新書

メディアジーン lifehacker
2023年5月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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