「考える」ときに必要な5つのステップとは?自分の意見のつくり方を教えます!

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「自分の意見」ってどうつくるの?

『「自分の意見」ってどうつくるの?』

著者
平山 美希 [著]
出版社
WAVE出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866214528
発売日
2023/04/12
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「考える」ときに必要な5つのステップとは?自分の意見のつくり方を教えます!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

自分の意見を持ち、それを他者に伝えるのはなかなか難しいもの。そこで参考にしたいのが、『「自分の意見」ってどうつくるの? 哲学講師が教える超ロジカル思考術』(平山美希 著、WAVE出版)。本書は、「自分の意見をつくることに苦手意識を持っている人たちに、考え方のヒントを提供」するために書かれているというのです。

著者は、フランス在住の哲学講師。日本の大学に在学中、フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユに興味を持ち、さらに深く学ぶためにパリのソルボンヌ大学に編入して本格的に哲学研究を始めたのだそう。

実はフランスでは、大学の哲学科でなくても、小学校から高校までの学校教育のなかで、哲学的な問いに答えるための“考え方”を学びます。

これは(中略)日常生活や仕事などで問題を解決する際に活かされているように感じます。その意味では、フランス人が物事を考えるときの土台になっていると言っていいでしょう。

私はこの考え方を何度も何度も実践しました。(中略)すると、フランス人と話すときにも、少しずつ「面白い」と評価されることが増えてきたのです。(「はじめに」より)

つまり本書においては、著者が自身の経験のなかから学びとった「フランス式学習法」を紹介しているわけです。それは、問いを立て、ことばを定義し、疑い、考えを深め、最終的に答えを出すという手法

(かつての著者がそうであったように)考えることに苦手意識を持っている人や、「自分の意見なんて誰も求めていない」と思い込んでいる人にとって、便利な「道具」になるはずだといいます。

そればかりか、ここで紹介されている考え方が実践できるようになれば、間違ったロジックで人を騙そうとする人や、乱暴な議論を進めてくる相手にも太刀打ちできるようになるのだとか。

そんな本書のなかから、きょうは第1章「フランス人は『考え方』をどう学ぶのか」内の「自分の意見を組み立てる5つのステップ」に注目してみたいと思います。

フランスの高校生が学ぶ哲学「考え方」の授業

前述のように、フランスでは学校教育の哲学の授業のなかで「考え方」を教わるのだそうです。でも、具体的にどのようなことを、どうやって学ぶのでしょうか?

哲学の授業では、幸福、自由、国家、正義、真理といったテーマごとに単元が分かれています。「幸福」の単元では、過去の哲学者たちのなかから「幸福」について考えた人の文章を読んで、生徒自身も幸福とはなにかについて考えます。(37ページより)

「幸せになるためにはなにをするべきか?」「幸福になるためにはすべての欲望を満たさなければならないか?」などの問いに対し、答えを探し出していくわけです。なおフランスの高校生は、卒業するために高校卒業資格を認定する「バカロレア」という試験を受けなければならないそう。

バカロレアには国語(フランス語)、外国語、数学、地理・歴史、保健体育、化学といった試験科目があり、そのなかには「哲学」も入っているのだそうです。そして、この哲学試験の「ディセルタシオン」と呼ばれる論述は、日本の大学入試のマークシート方式とはまったく異なるものなのだとか。

自分の意見を述べる論述試験で、小論文のような形式です。

ただし、問題となる論述のテーマはたった一文の短い文章です。

たとえば、過去にはこんな問題が実際に出題されました。

・働くことで人間は何を得るか?

・芸術作品には意味が必要か?

・科学は何の役に立つか?

・議論することは暴力を放棄することか?

(38〜39ページより)

こうした短い問いに対し、高校生たちは自分の考えを論理的に構築し、4時間以内に文章にまとめなければならないというのです。(36ページより)

考えるときに役立つ5つのステップ

著者によれば、フランスの高校生たちは哲学の授業のなかで、この試験を解くためのメソッドを習うそう。本書ではそれを、わかりやすく5つのステップに落とし込んでいます。

① 問いを立てる

② 言葉を定義する

③ 物事を疑う

④ 考えを深める

⑤ 答えを出す

(40ページより)

ステップ①の「問いを立てる」で行うべきは、考えるための“目印”を見つけること。

「問い」は思考の幅を広げる役割を果たしてくれるため、まずはそこから考えることを始めるわけです。

ステップ②の「言葉を定義する」は、ことばをていねいに扱って思考をクリアにする段階。思考が「なんとなく」だと、認識がズレたまま議論が進むことになりかねないため、ことばの使い方を意識するということです。

ステップ③の「物事を疑う」は、「本当にそう?」と疑いの目を向けるステップ。「疑う」という姿勢を身につけることで、より主体的、積極的になれるのです。

続く④の「考えを深める」は、あるテーマについて自分の考えを段階的に深めていくステップ。たとえば、会話をどう続ければいいのか悩んでしまう人に役立つようです。

そしてステップ⑤の「答えを出す」は、答えを明確にすることで「反論されたらどうしよう」というような不安を解消するステップ

なお①〜④は思考が展開するだいたいの流れに沿っているものの、必ずしも順番どおりに行う必要はないそう。いずれにせよ、すべての作業を経たあとで最終的に⑤の「答え」に至るわけです。

これら5ステップを応用すれば、「考える」際の支えになってくれると著者は述べています。たしかに日常生活からビジネスまで、さまざまな場面において役立ちそうです。(39ページより)

著者は本書で明らかにされている「道具」によって、前向きな人生を歩むことができるようになったといいます。だからこそ、同じメソッドを習得すれば、自分の意見を堂々と主張できるようになるだろうと断言できるわけです。自分の軸を確立するために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: WAVE出版

メディアジーン lifehacker
2023年5月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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