続かない人も、意志が弱い人でも「やり抜く仕組み」をつくるのはじつは簡単だった!
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
するべきことを続けられないときには、「自分は意志が弱いから」などと感じてしまうものかもしれません。しかし、それは意志の弱さや性格の問題ではないと断言するのは、『やり抜く人になるための戦略書』(伊庭正康 著、アスコム)の著者。
続けられないのは、ただ「続ける」ための方法を知らないからだというのです。
・面倒くさいから/苦痛だから
・飽きっぽいから
・忙しいから
・相手に嫌われないか心配だから
(6ページより)
続けられない理由としては、おもにこの4つが考えられるといいます。そこで著者は、「TKKの法則」をすすめています。自身が心理学や経営学など国内外のさまざまな知見を研究するなかで発見した法則なのだそう。
T→たのしく
K→かんたんにする
K→効果を確認する
(7ページより)
たしかに楽しくやれれば、「面倒くさい」「飽きっぽい」は解消できるかもしれません。そこできょうは第2章「意志が弱くても『仕組み』さえつくれば続けられる」に焦点を当て、「TKKの法則」について確認してみることにしましょう。
「やりたくないこと」を「やりたいこと」に変える方法
仕事が仕事である以上、心が動かない、すなわち「やりたくない」と感じることがあるのは当然の話です。では、そんなときにはどうすればいいのでしょうか?
「やりたくない」を乗り越える方法のひとつとして、著者はそれを「やりたい」に変えることを提案しています。
たとえ「やりたくない」仕事でも、自分なりに価値ある・意味あるものに変えていけば、「やりたい」に気持ちが変わっていくというのです。
重要なポイントは、否定的になるのではなく、「どうせやるなら、こうしてみよう」というように前向きに考えること。
「どうせやるなら」と自分に投げかけ、どんな変化を生み出すか考えていけば、「自分ごと化」でき「やらされ感」から脱却できます。
自分がどうすれば得をするか、逆にやらないと損をするかを考えていくとわかりやすいかもしれません。(79ページより)
「やりたくない」ことを価値や意味あるものに変換できたら、「やりたい」マインドが生まれることになるでしょう。そのため自走力が高まり、楽しさも生まれるというわけです。(76ページより)
難しい仕事を簡単にする3つのコツ
2つ目は「K」、「かんたんに」。当たり前のことですが、「やり抜く」ためには簡単にすることがベストだという考え方です。なお著者は、挫折せず、やり続ける人は、次の3つのコツを身につけていることが多いと指摘しています。
1. フォーマットをつくっている
たとえばご存知のとおり、故スティーブ・ジョブズ氏がいつも同じ格好をしていたのは、服を選んだり考えたりすることにエネルギーや時間をかけるのは無駄だと考えていたから。ここからもわかるように、ひとつに決めれば、迷ったり悩んだりする煩わしさから解放され、やり続けやすくなるということです。
2. 手間を省いている
移動中にメールが届いたら、オフィスに戻ってパソコンを立ち上げる前に、スマホからその場で返信するなど、作業の無駄を省くということ。著者の場合は、スマホの音声入力をフル活用しているそうで、それだと手でタイピングする10倍の速さで作成できるのだとか。
3. 判断を減らしている
判断にかけるエネルギーを極限まで減らすということ。
取り入れてほしいのが、「if-then(イフゼン)プランニング」という方法です。(中略)条件反射でやるべきことを自動化する究極のメソッドとしてイチ押しです。(88ページより)
「もし○○になれば◆◆する」というフォームに、「もし19時になったら、ジムへ行く」というように行動を落とし込み、実践するわけです。こうして続けていくと習慣として定着し、効率が上がるようです。(84ページより)
生産性が高まる「確認」のテクニック
最後の「K」は「効果を確認する」ことで、その手段のひとつが記録。
たとえば「ダイエットを続けよう」ということであれば、毎日の体重の変化がわかるように、計測した数値をグラフで示すのです。
あるいは「読書習慣を身につけたい」なら、まずは毎日の読書時間を「22時から」というように決め、読後には読んだ本のタイトルと読書時間、読んだページ数をメモするわけです。
注意してほしいのは、記録すること自体が目的ではない、ということです。
複雑な工程は「やり続ける」ための阻害要因です。
記録をつけ始めても面倒で続かないのでは、何のための記録なのか本末転倒になりますから、毎日、難なく続けられる簡便さはキープしてください。(93ページより)
記録は「効果を確認する」ためにつけるものなので、「いまの自分の状態を把握するため」という目的を忘れてはならないということです。(90ページより)
かつては「続けられない営業」だったという著者も、本書で紹介されているメソッドを活用することで「やり抜く人」になれたのだそうです。
「『やり抜く人』には誰でもなれる」と断言しているのは、そんな経験があるからこそ。なかなか続けられずに困っているなら、手にとってみてはいかがでしょうか?
Source: アスコム