めんどくさがりでも、やりたくないことでも、予定通りに「自分を動かす」スケジュールの組み立て方

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めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法

『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』

著者
竹内 康ニ [著]
出版社
ワニブックス
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784847073212
発売日
2023/06/16
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

めんどくさがりでも、やりたくないことでも、予定通りに「自分を動かす」スケジュールの組み立て方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「『やらなければならない』とわかっているのに、なかなか始められない」とか、「どうしてもがんばることができなくて、結局は後回しになってしまう」というようなことは、仕事においてはよくあること。

しかも、ギリギリにならないと動き出せないという状態が続くと、心も体も追い詰められてしまいがち。そのため自己嫌悪に陥ってしまうこともあるでしょうし、対外的にも影響を与える可能性も否定できません。期限を守れなければ、信頼を失ってしまうことにもなりかねないわけです。

そこでご紹介したいのが、『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(竹内康二 著、ワニブックス)。応用行動分析学を専門とする明星大学心理学部心理学科・教授である著者はここで、「なぜ、望まない結果が訪れるとわかっているのに、必要な行動を優先的に行なえないのか」という、多くの人が抱える問題に立ち向かっているというのです。

人間が生まれながらに持っている「行動の原理原則」を知り、受け入れて、利用してしまえば、行動の改善は案外簡単です。

行動科学に基づいた「すぐやる」「後回しにしない」ためのシンプルな技術を使えば、今よりも「自分を予定通りに動かす」ことが可能です。(「まえがき」より)

本書で紹介されている行動分析学には、予定どおりに行動できない原因を「本人の意思の力に求めない」という特徴があるのだとか。たしかに意思の弱さを行動できない原因にしてしまうと、対策は「強い意志を持つこと」というような曖昧なものになってしまうでしょう。

それに実際のところ、予定どおりに行動を起こせない原因が「本人を取り巻く環境」にあることも少なくはないはず。そこで行動分析学では、まわりの人、場所、時間などの「環境を調整する技術」があれば、多くの行動をコントロールできると考えているというのです。

著者によると行動分析学は行動科学の一分野であり、「行動を予測し、コントロールすること」を目的とした学問。最大の特徴は、“即効性にこだわり、実行のハードルを最小限に下げた”行動力を高める技術であることなのだそうです。

その技術を読者に伝えようとしている本書の第5章「やってのける人の具体策 〜賢い『スケジューリング』『ToDo』『強制始動』『時間利用の技術』〜」のなかから、すぐに活用できそうなトピックを抜き出してみましょう。

スケジュール帳の使い方には“ちょっとした”コツがある

スケジュール帳を活用してセルフマネジメントを行うことは、シンプルでありながらも高い効果が望める王道の手段。紙の手帳を使うのであれ、スマホのアプリを活用するのであれ、“やるべきことの記載”を目で確認することが行動開始のきっかけになるからです。

また、「〇〇を△△回やる」というような目標を書き込めば、行動が促される可能性も高まるに違いありません。なぜならそれは、「目標の設定による自己教示」をしたことになるから。

とはいえ当然ながら、スケジュール帳を使いさえすれば簡単に効果が出るわけではないでしょう。「どのように活用するか」によって、効果は変わってくるはずだからです。

では、具体的にどうしたらいいのでしょうか?

まず、「やるべきことを実行する日付の欄に記入」するのか、それとも「やるべきことを仕上げる締め切り日の欄に記入」するのか、「開始日から締め切りまでの期間がわかるように記入」するのか考える必要があります。

行動を開始するキッカケとしてスケジュール帳を使うのであれば、その行動をする日の欄に記入するべきです。(133ページより)

たとえばその作業の締め切りが1カ月後だとしたら、締切日の欄に「〇〇締め切り」と記入する人が多いのではないでしょうか? しかし、締め切りの日だけに記入することにはリスクが伴うと著者は指摘しています。

それが何日もかけてコツコツ進めるような仕事である場合、計画的に作業を進めなければなりません。ところが単に締め切り日を記入しておくだけだと、“締め切りに至るまでの作業”を進めるためのきっかけとはなりにくいわけです。すると、締め切り間際になって慌てることになってしまうかも。

したがって、そうならないためには、作業をする日の欄にも記入するほうがよいということです。

いうまでもなく、スケジュール帳を自己教示のためのツールとして活用すると効果が望めます。とはいえ、それが“作業を行うきっかけ”になるような使い方をしなければ、効果は半減してしまうのです。(132ページより)

自分のがんばりを「わかりやすく自分に認識させる」ことの効果

なお、セルフマネジメントとしてスケジュール帳を使うという方法には、自己記録や自己評価としての側面もあるようです。

自己教示が行動を起こすキッカケであるのに対し、自己記録や自己評価は行動のあとに行うもの。具体的には、予定に従って実際に行動できたかをスケジュール帳に記載するわけです。

その方法は、実行したものに二重線を入れるとか、花丸をつけるとか、やった内容を記入するなどさまざま。目標をどの程度まで達成できたのかを、◎や○、△などで表すのもいいかもしれません。

なお、このことについては気になる点が著者にはあるようです。

終わった作業にはあまり興味が持てず、終わった予定に対しては何もしない人もいるでしょうが、行動分析学的にはちょっともったいないと言えます。

自分が頑張ったことについて、自分に分かりやすく結果を示すことは、多くの人にとって強化子になり得るからです。(133ページより)

「強化子」というのは心理学の専門用語で、行動の頻度を高めるような環境の変化を意味するもの。端的にいえば、それが強化子になればモチベーションが上がるということ。

手帳に書き込んでおいた作業を終え、そこに二重線を引っぱったりすると、満足感や達成感を得ることができるはず。つまりは、それこそが大切な強化子。そしてそれは、次の行動への動機を生み出してくれる可能性があるということです。(134ページより)

「行動できない」という問題には、丸腰で立ち向かっても太刀打ちすることは不可能。だからこそ「行動分析学」という“データに基づいた実践的な武器”を持って立ち向かうべきだと著者は主張しています。

予定どおりに行動し、期限内に成果を出せるようになるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: ワニブックス

メディアジーン lifehacker
2023年7月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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