『「結局、何が言いたいの?」と言われない 一生使える「1分で伝わる」技術』
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話がチグハグになる人もすぐできる。相手の聞く心構えをつくりスムーズに伝える会話術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『「結局、何が言いたいの?」と言われない 一生使える「1分で伝わる」技術』(沖本るり子 著、大和出版)の著者は「1分トークコンサルタント」。「話を1分以内にまとめる」を合言葉に、全国で研修や講演を行っているのだそうです。
そのため“プレゼンの達人”と称されることもあるようですが、もともとは上司や取引先にいいたいことをうまく伝えられず、仕事で失敗ばかりの20代を送ってきたのだとか。
しかし、そんな経験があるからこそ、「どんなに伝え下手な人でも使える、再現性のある方法」を伝えられるのかもしれません。
とはいえ、1分以内で話をまとめることなどできるのでしょうか? そもそも、なぜ「1分」なのでしょうか?
上司も部下も忙しく動き回っている毎日。きれいな声で丁寧に話さなくていいから、大事な要素だけを簡潔に伝えてほしいと、みんな心の中で思っているはずです。
つまり、本当に現場で使えるのは、いきなり意見を求められたり、上司に話しかけられたりしたときのような、とっさのシーンでこそ使える方法。
そして、その方法の肝となるのが「1分で伝える」ということなのです。(「はじめに」より)
そこにはコツもあるようですが、とはいえ難しいことではなく、誰でも真似できる簡単なものばかり。だとすれば、ぜひともそのコツを知り、ビジネスの場などで活用してみたいところです。
そこできょうは、「お互いの解釈の違いをなくす、伝え方の基礎」がまとめられた第1章「パッと理解してもらえる説明の仕方」に注目してみることにしましょう。
話している途中で、相手をイライラさせてしまう
× あるあるやりがち例
部下「課長! この前の天気が急に悪くなった大雨の日を覚えてますか? あの日、周辺でイベントがあったせいで私たちの運営しているレストランもかなり混んでいて、入り口では並んで待っている人も10名くらいいたんです。そんな混雑しているのに、この料理には何が入っているのかと、食材を質問してこられたお客様がいらっしゃったんですよー」
課長「クレームでもあったの?」
部下「いえ、そうじゃなくて……。細かい食材のことなどわからないから困って、メニュー管理者に確認したんですよ。そしたら、また別の料理でも聞かれ……。それで、お客様にもわかるようにメニュー表に食材を記載することを提案したいんです」
課長「なんだ、提案か。最初にそう言ってくれよ……」(32ページより)
話がわかりにくい人は、時系列に沿ってダラダラと思いつきで話をしてしまいがち。
たとえば上記の例の場合、課長は天気の話かと勘違いするかもしれません。また、ここで課長はクレームがあったのかと確認していますが、確認せずにクレームだと思い込んでしまう可能性もありえます。その結果、関係ない話に気をとられ、肝心の提案の内容をスルーしてしまうことにもなりかねないわけです。
だからこそ話す際には、「なにがいいたいのか」を最初に一文で宣言することが大切。当然ながらそれは「もっとも優先したい一文」ですから、「一文だけしか伝えてはいけない」といわれたと想像しながら、最優先すべき箇所を考えるのです。
この例にあてはめるなら、冒頭に「課長! 料理の食材をお客様にもわかるようにしたく、提案があります」という一文を持ってくるのです。その結果、以後の話もこの提案に関するものだと思って聞いてもらえる可能性が高くなるわけです。(32ページより)
「え? なんの話?」といつも聞き返される
× あるあるやりがち例
課長「他に、何か意見がある人は?」
部下「はい、課長! 料理の食材をお客様にもわかるようにしたくて、食物アレルギーがあるお客様を不安にさせないようにしたいです」
課長「え? 何? 不安?」(38ページより)
前述のとおり、いいたいことを一文で宣言すべき。この発言もその点はクリアできていますが、とはいえ唐突であるためわかりにくい。しかし、一文の伝え方をもう少し工夫すれば相手に伝わりやすくなるといいます。
話をボールに置き換えて想像してください。
いきなりボールを投げられて、瞬時に受け止められる人がどれくらいいるでしょう。(中略)
会話も同様です。
相手が話を聞く心構えができるように、こんなふうに結論から伝えてみましょう。
「はい、課長! 提案は、料理の食材をお客様にもわかるようにすることです」(39〜40ページより)
「提案は」と問われれば、聞き手はそれ以降の話を「提案」の内容だと思って聞くことができます。つまり短い一文であったとしても、このように「これからなにについて聞けばよいのか」聞き手の心構えをつくってあげることが重要だということ。
例えば、「山口です」と言われた場合、名前なのか住所なのか、出身なのか不明です。
そこで「名前は、」と最初に伝えることで、「次に出てくる話の内容は、名前のことなんだな」と心構えができるのです。
「出身は、」と最初に伝えることで「次に出てくる話の内容は、出身のことなんだな」と出身の話題として話を聞こうとする心構えができます。(40〜41ページより)
つまり結論から伝えることで、相手は「これからなにを伝えようとしているのか」を理解でき、そのつもりで聞くことができるのです。
「お願いは、」「報告は、」「理由は、」「根拠は、」「サイズは、」……といったように、一文でも結論から伝えることです。(41ページより)
聞き手がぼーっとしているときであっても、一瞬で話を聞く心構えができるように伝え方を工夫してみることが大切だということです。(38ページより)
このように簡潔で実用性の高い内容なので、すぐに役立てることができるはず。「うまく伝えられない」という悩みを抱えている方は、手にとってみてはいかがでしょうか?
Source: 大和出版