増税&予算カット思想の財務省は「カルト」と断罪する「森永卓郎」の主張とは?

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ザイム真理教

『ザイム真理教』

著者
森永 卓郎 [著]
出版社
三五館シンシャ
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784866809311
発売日
2023/05/23
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「カルト」への「入信」を阻止し、ゆるい信者には「脱洗脳」の効果も

 東京大学経済学部を卒業し、現獨協大学教授の経済学者・森永卓郎氏の最新著『ザイム真理教』は画期的な一冊だ。現政府の経済政策の誤りを明らかにすると共に、そうした誤りの背後に財務省による「緊縮思想」の激しい布教活動があること、そしてその布教活動が「カルト宗教」のそれと寸分違わぬものであることを明らかにした、本邦初の一冊だからだ。

 森永氏はまず、「宗教」と「カルト」の相違を論理的に定義した上で、財務省が政治家やマスコミ・世論に対して、彼らの「教義」である増税や支出カットを兎に角繰り返すことが絶対的正義であると断ずる「緊縮思想」を普及(つまり布教)し続けようとする様が「カルト」そのものだと主張する。そして、その彼らの教えを「ザイム真理教」と命名する。

「カルト」教団は一般に、科学的に立証不能な「教え」に背けば地獄に落ちるという脅迫を通して信者を洗脳し、信者を不幸に陥れる一方で、幹部連中は大きな利益を得るという構図を持つ。森永氏はこうしたカルトの特徴が全て「ザイム真理教」に当てはまることを明らかにする。すなわち財務省は、(1)緊縮をしなければ日本の財政が「ハタン」するという非科学的な主張を繰り返して人々を脅迫し、「増税&予算カットこそ絶対正義だ」と人々を洗脳し、(2)その洗脳を通して政府に緊縮を強要し、それによって経済を疲弊させ、賃金を下落させることを通して「一般信者」である大多数の国民を不幸に陥れると同時に、(3)財務省幹部連中は軒並み高い地位と収入という大きな私的利益を得ている―といった諸実態が「カルト教団」と全く同じ構図にあることを示していく。

 ただし、あらゆるカルトがそうであるように、その教義の「嘘」についての証拠をどれだけつきつけても説得は無理であり、激しい反発を引き出すだけに終わる。しかし一般国民のカルトへの「入信」を食い止め、洗脳水準がまだぬるい「信者」の洗脳を解除するためには、本書は抜群の効力を発揮するに相違ない。だから、日本国民の大部分が「ザイム真理教」の洗脳工作に多かれ少なかれTV新聞を通じて毒されてしまっている今日、殆どの日本国民にとって本書は大きな意義を持つ。

 ちなみに本書はおおよそ映画一本程度の時間で読了できる程の分量だ。誰でもスグに読める。ついては是非、一人でも多くの皆様にザイム真理教に対する心的「ワクチン」として本書をご一読頂きたい。

新潮社 週刊新潮
2023年7月27日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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