インプットではなくアウトプットできる人材が重要!替えがきかない「専門性」の身につけ方

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替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方

『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』

著者
国分 峰樹 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866802374
発売日
2023/07/21
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

インプットではなくアウトプットできる人材が重要!替えがきかない「専門性」の身につけ方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

現代のビジネスパーソンは、仕事の結果に対する全責任を負って自分の実力を磨く「ビジネスのプロ」としての自覚を求められるようになってきているーー。『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』(国分峰樹 著、フォレスト出版)の著者は、そう主張しています。

Chat GPTの登場に象徴されるように、現代ではAIに仕事を奪われる現実味が増してきています。そんななか、他の人でも代わりがきくような仕事をただこなしているだけでは、この先、いまと同じレベルの給料が支払われ続ける可能性は高くないはず。残りのキャリアをなんの専門性も持たないままやりすごそうという姿勢には、すでに限界があるわけです。

だからこそ、これからの社会を自分らしく前向きに生きていくために必要なのは、自己革新を追求すること。具体的にいえば、自己革新のキーワードは「専門性」だそうです。

専門性とは、すでに存在する専門知識を「インプット」することではなく、新たな専門知識を「アウトプット」できることを意味します。

希少価値のある専門性を身につければ、企業から求められる人材になり、会社で活躍するチャンスや力を発揮できるフィールドが広がっていきます。自分の専門性を差別化することで、専門性で戦えるビジネスパーソンになろう! というのが、この本の目標です。(「まえがき 専門性で戦えるビジネスパーソンになろう」より)

専門性を身につけるのは難しそうでもありますが、その方法は長い歴史を積み重ねて「型化」しているのだとか。つまり、一度「型」を身につけてしまえば、何度でもそれを横展開することができるようになるということ。

逆にいえば、専門性の身につけ方を知らないということは、なんの武器も持たないまま丸腰で戦場に立っているようなもの。そういう意味でも、専門性は不可欠であるわけです。

でも、果たして専門性はどのように身につければよいのでしょうか? そもそも、専門性とはどのようなものなのでしょうか? 第3章「専門性を身につける方法を知ろう」内の「専門性とは『新しい専門知識を生み出すこと』」のなかから、その答えを探してみることにしましょう。

専門性とはインプットではなくアウトプット

専門性について著者がもっとも強調したいのは、「専門性とは、専門知識のインプットではなく、専門知識のアウトプットである」ということだそう。専門知識をどんなにインプットしたとしても、それが専門知識のアウトプットにつながらなければ「専門性」とは呼べないという考え方。

つまり、専門性とは「専門知識を知っているかどうか?」ではありません。専門知識を知っているかどうかということが専門性だと思っている人は、本物の専門性はなかなか身につかないといえます。ただ「知っている」ということだけでは、Chat GPTが猛威を振るうような時代においては、まったく価値を生まなくなります。(125ページより)

そのため、まずしっかりと認識しておく必要があるのは、「専門性とは、新しい知識を生み出すことである」というポイント。専門知識の「消費者」ではなく、専門知識の「生産者」になることを目指す必要があるわけです。

そこで重要なのが、「どうすれば専門知識を効率的に得ることができるか?」というような“消費の仕方”ではなく、「専門知識はどうやって生み出すことができるか?」という“生産の仕方”を理解すること。

そして、その答えは「研究」にあるのだそうです。(123ページより)

研究とは「新たな専門知識を生み出す技法」

専門性とは「新しい専門知識を生み出すこと」であり、「新しい専門知識を生み出すにはどうしたらいいか?」という問いに対する答えが研究なのだと著者はいいます。なぜなら、「知識を進化させるのが研究だから」。

なお、この答えにたどりつくまでには、歴史的にふたつの大きな発見があったようです。ひとつは「知識は進化していくものである」という発見で、もうひとつが「知識を進化させるための技法」の発見。

この点について、大阪大学名誉教授の小林傳司さんは、『研究する大学:何のための知識か』(二〇一三)において、知識というものはかつて「動かないもの」であったといいます。正当的な知識は古典古代に存在しており、その継承と保存こそが重要という考え方です。(126ページより)

したがって中世の大学の使命は知識の伝承であり、そこで念頭に置かれている知識は、研究によって生み出されるタイプの知識ではなかったのです。具体的には、古代のギリシャ・ローマの古典的知識と当時の専門職(神学、法学、医学)に求められる知識だったということ。つまり、中世において知識は固まったもので、「専門知識のアウトプット」ではなく「専門知識のインプット」が求められていたのです。

そのため、専門性とは「専門知識を知っているかどうか」だと考えている人は、まさに中世の発想のまま止まってしまっている状態なのだと著者は述べています。

名古屋大学名誉教授の潮木守一さんは、『フンボルト理念の終焉?:現代大学の新次元』(2008)のなかで、「すでに知識は定まっており、疑う余地のない不動のものである」という伝統的な考え方に対して、「知識をまだ明らかにされていないもの」として扱い、大学を研究に変革したのが「フンボルト理念」だとしているのだそうです。

フンボルト理念が提唱したのは、

<知識が進歩するとすれば、大学は何を教えなければならないのか。教えるべき知識が進歩する以上、すでにできあがった、既成の知識を教えるのでは、やがては通用しなくなる。そうであれば、大学が伝えるべきことは、いかにして新たな知識を発見するか、いかにして知識を進歩させるのか、そのための技法である。

すでに確定した知識内容そのものでなく、その知識がいかにして作り出されたのか、いかにして発見されたのか、人類未知の知識を発見するためには、どういう方法を使ったらよいのか、その技法を教えなければならない>

ということです。すなわち、研究とは「新しい知識を生み出す技法」として誕生したといえます。(128ページより)

少しばかり難解ですが、つまりはこの技法こそが、本書の核となっている「専門性の身につけ方」だということ。

こうして歴史を振り返ってみればわかるように、専門性を身につける「型」は古く19世紀から存在し、多くの議論を積み重ねながら洗練されていき、現代にまで受け継がれているわけです。したがって、専門性が求められるビジネスパーソンにとって、これほど貴重なノウハウはなかなかないのだと著者は結論づけています。(126ページより)

これからの時代に活躍するビジネスパーソンは、個性的な「専門性」が決め手になるはず。しかし、日々の業務のなかだけで専門性を身につけるのは難しくもあり、自ら学ぶことが大切。したがって、時代の変化に応じて自分の専門性を進化させられるビジネスパーソンになるために、「専門性の身につけ方」自体を知るべき。

こうした考え方を軸とした本書は、ビジネスパーソンとしてのプロ意識を高めるために大きく役立ってくれることでしょう。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年7月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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