失敗する勇気が人を成長させる。課題に立ち向かう背中を押してくれる「アドラーの言葉」

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自己肯定感を高める、アドラーの名言

『自己肯定感を高める、アドラーの名言』

著者
桑原晃弥 [著]
出版社
ぱる出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784827214017
発売日
2023/07/24
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

失敗する勇気が人を成長させる。課題に立ち向かう背中を押してくれる「アドラーの言葉」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「人は努力と訓練によって、何者にでもなることができる」という楽観主義が、心理学者アルフレッド・アドラーの基本的な考え方です。自分次第で未来は変えていくことができるという明るさがそこにはありますが、同時に自分を変えていくことの難しさは誰もが経験していることでもあります。

一体、なぜ自分を変えていくのは難しいのでしょうか?

「失敗への恐れ」が「一歩を踏み出す勇気」を挫くこともあれば、「自分なんか」「私なんか」といった自分に対する過小評価が、変わることへの恐れにつながります。(「はじめに」より)

自己肯定感を高める、アドラーの名言』(桑原晃弥 著、ぱる出版)の著者はこう述べています。

新しいなにかをやろうと思いながらも一歩を踏み出せないのは、「失敗したらいやだ」「笑われなくない」というような気持ちが邪魔するから。たしかに私たちは、得意なことは率先してやろうとする一方、そうでないものには消極的になりがちかもしれません。

しかしそれは誰が決めたことでもなく、自分が決めていることにほかならないのです。だからこそ、「へたくそだからやめる」のではなく、「好きだし、やりたいからやってみよう」という一歩を踏み出す勇気が大切だということ。もちろん時間はかかるでしょうし、人とくらべて「自分はダメだ」と落ち込むこともあるかもしれません。が、くらべるべきは「他人」ではなく「昨日の自分」なのだとアドラーも主張しているそうです。

昨日の自分と比べてほんの少し進んでいれば、それが進歩であり、その積み重ねが成長となるのです。今の自分に自信が持てず、「変わりたい」のなら、まずは一歩を踏み出しましょう。それが自分を変え、周りを変え、人生を変えていくことになるのです。(「はじめに」より)

こうしたコンセプトを軸にアドラーの考え方を紹介した本書の第4章「『失敗を覚悟する』と心は軽くなる」のなかから、「不完全である勇気、失敗をする勇気、誤っていることが明らかにされる勇気の3つの勇気があれば、人生の課題に対処できるし、成長できる。」に焦点を当ててみたいと思います。

アドラーが語る「3つの勇気」とは

アドラーの名言

勇気の最も優れた表現の1つは、不完全である勇気、失敗をする勇気、誤っていることが明らかにされる勇気である。(93ページより)

著者によれば、「勇気」はアドラーの心理学を特徴づけることばのひとつ。

それは「勇ましさ」というよりも、「人生のよくある問題に対処することが、いつも勇気があることである」と定義されています。(91ページより)

アドラーは“勇気のもっとも優れた表現”、「不完全である勇気」「失敗をする勇気」「誤っていることが明らかにされる勇気」の3つを挙げているのだとか。それぞれを確認してみましょう。(91ページより)

1. 不完全である勇気

「自分は失敗することもある、不完全な人間だ」と認めてこそ、人は行動を起こすことができるということ。

たとえば初めての仕事を命じられたとき、経験の浅い社員なら誰だって緊張し、不安になって最初の一歩を踏み出せなくなってしまうものです。それは、経験のなさに加えて、「失敗したくない」「完全でありたい」という願望が強すぎるから。しかし、そもそも100点を目指す必要はないのです。

100点を目指すから、行動を起こすのが怖くなり、躊躇します。そうではなく、「60点でいい」と割り切ってまずはやってみます。たとえ結果は不完全であっても、そこから「もっとこうしたらどうだろう」と考えながら改善を繰り返すことで最後に100点になればそれでいいというやり方です。(92ページより)

これがアドラーのいう「不完全である勇気」なのだそうです。(91ページより)

2. 失敗をする勇気

目の前の課題を避けるのは「勇気がない」ことであり、その一方、課題に対処してこそ「勇気がある」といわれます。いうまでもなくそれは、人生はつねに成功が約束されているわけではないからです。

成功が100%約束されていれば挑戦には勇気は不要です。

しかし、なかには困難で、失敗する恐れがある課題もあります。そんな時、失敗を恐れ、他の人の評価を恐れて課題への挑戦を避けるようでは成長はありません。(92ページより)

したがって大切なのは、失敗を恐れずに挑戦すること。そして失敗から多くのことを学んで成長する。それこそが「失敗をする勇気」だということです。(92ページより)

3. 誤っていることが明らかにされる勇気

失敗をしたときにすべきでないのは、失敗を認めようとせず、その失敗を周囲から隠そうとすること。認めず、隠そうとすれば、小さな失敗はより大きな失敗につながってしまうからです。それでは、取り返しのつかない事態になりかねません。

それよりも失敗したことは素直に認め、なぜ失敗したのかをきちんと分析します。そうすることで失敗は成長につながり、成功をもたらすことになります。メンツを重んじて失敗を認めないのは、自分にしか関心のない人です。(93ページより)

これら3つの勇気を持つ人は、仕事においても優れた働き手になることができるそう。人は成功からも失敗からも多くを学ぶことができるからこそ、困難な課題に挑戦できるということです。(90ページより)

いまは生きづらい時代であり、気持ちをくじかれることも少なくないでしょう。しかし勇気と訓練によって課題に対処していけば、すばらしい未来が開けていくはず。そのためにも本書で紹介されているアドラーのことばを参考にしながら、自分の可能性を信じて生きていきたいところです。

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2023年7月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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