『梅雨物語』
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『梅雨物語』貴志祐介著
[レビュアー] 産経新聞社
3つの短編を収録している。このうち「皐月闇(さつきやみ)」は、不穏な雰囲気に包まれた一編。
元教師で俳句部の顧問だった作田慮男(のぶお)のもとに、教え子の萩原菜央(なお)という若い女性が訪ねてきた。菜央は、命を絶った兄が遺(のこ)したという一冊の句集の解釈を作田に依頼する。作田と菜央が一つ一つの俳句に隠された事実を解き明かしていくのだが、そこには恐るべき秘密が隠されていた。
謎解きのスリルが味わえる一方、2人のやりとりから次第に感じる引っかかりに、何ともいえない怖さを覚える。ホラーとミステリーの名作を生み続けた著者渾身(こんしん)の一冊だ。(角川書店・2145円)