ビジネスパーソンは「共感力」と「深掘り力」の二刀流で飛躍する。苦手な方のスキルを伸ばすには?

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「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである

『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』

著者
三宅 孝之 [著]
出版社
PHP研究所
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784569854700
発売日
2023/07/21
価格
1,705円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ビジネスパーソンは「共感力」と「深掘り力」の二刀流で飛躍する。苦手な方のスキルを伸ばすには?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(三宅孝之 著、PHP研究所)の著者が代表を務めるDI(ドリームインキュベータ)では、「ビジネスプロデュース」を行なっているのだそうです。ビジネスプロデュースとは、大企業の次の柱となり得るような数百億、数千億円規模の新規事業を創造すること。

その担い手であるビジネスプロデューサーのことを、本書では「大きな事業を生み出す人材」と定義しています。そして、ビジネスプロデューサーを育成するために重要なのが、苦手な能力を鍛えること。具体的には、「深掘り力」と「共感力」のうち、苦手なほうを鍛えることでビジネスパーソンとして大きく成長するというのです。

大きく言うと、ビジネスパーソンは深掘りタイプと共感タイプのいずれかに分けられます。

理想は、深掘り力と共感力の両方を高次元で併せ持っていることですが、大抵の人はどちらかが得意で、もう一方を苦手としています。

そのため、深掘りタイプは共感力を、共感タイプは深掘り力を意識的に鍛えていくことで(実際には「自分の中に眠っている能力を呼び起こす」と言うほうが正しいですが)、高いパフォーマンスを発揮できるようになります。(「はじめに」より)

そこで本書では、まずビジネスプロデュースの概要を説明し、次いでビジネスプロデューサーになるための深掘り力や共感力の鍛え方について解説しているのです。

重要なポイントは、「ビジネスプロデューサーのスキルとマインドを身につけるためには、なにを意識し、具体的にどのようなトレーニングを積めばいいのか」ということ。

だとすれば、「深掘りタイプ」と「共感タイプ」について学んでおきたいところ。そこできょうは第3章「『共感力』と『深掘り力』の高次元でのハーモニーを目指す」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。

「深掘りタイプ」と「共感タイプ」

自社でのべ数百人のビジネスプロデューサーを育ててきたという著者は、「深掘りタイプ」と「共感タイプ」の特徴を次のように説明しています。

深掘りタイプは、ある物事をトコトンまで深く掘り下げて調べたり、分析したり、考えたりすることが得意なタイプです。様々な角度から論理的に考えることができ、数字にも強く、何事も自分が納得いくまで粘り強くやり切ることができます。

そのため、研究職やコンサルティング職などでその能力を遺憾なく発揮し、活躍している人が数多くいます。(88〜89ページより)

しかしその一方、人づきあいや他人と話すことは苦手。そのため内にこもりやすく、独りよがりになる傾向があるようです。

また、せっかく調べたことをポイントを絞ってまとめることができず、他人にわかりやすく伝えるのも不得手。加えて、あらゆる面で作業が遅いという最大の弱点も抱えているのだとか。さらには、臨機応変に動くのも得意ではないようです。

共感タイプは、人の気持ちを察して、仲よくするのが得意なタイプです。人と話すことが上手いので、相手から色々な話を聞き出し、その要点をさっとまとめてアウトプットすることができます。その作業のスピードは速く、内容も割と的を射ています。

学生時代、あなたの周りにも、友達から借りたノートのコピーで勉強して試験を乗り切ってしまう要領のいい人がいたのではないでしょうか。そうしたタイプの人たちのことです。(89ページより)

ただし物事を調べて深く掘り下げて考えることが苦手であるため、思考が浅いという面も。ある程度考えてわからなかったり、やってみてできなかったりすると、飽きて放置してしまうといいます。

突き詰めて考えることをしないので、相手の発言に対して反射的にことばを返すなど、なにごとにおいても拙速になりがち。他人の発言に左右されやすく、考えがブレやすいという弱点もあるようです。

そんな深掘りタイプと共感タイプは、コインの面裏の関係だと著者は表現しています。いわば、深掘りタイプが得意なことが、共感タイプは苦手。逆に、共感タイプが得意なことは、深掘りタイプが苦手だということです。(88ページより)

苦手な能力も鍛えれば伸びる

ビジネスプロデューサーを目指すうえで重要なのは、まず、自分のタイプを知ること。タイプを知ることで、どのようなスキルを鍛えるべきかを意識できるようになるからです。

ただし、見逃すべきではないポイントもあるようです。

本来、人間には、深掘り力と共感力の両方の能力が備わっています。どちらか一方の能力が発揮しやすいというだけで、もう一方の能力も、意識してトレーニングすれば、鍛えることができます。(96ページより)

著者自身も、過去を振り返ると、深掘りタイプ優位だった時期と共感タイプ優位だった時期があったのだといいます。

中学時代までは深掘りタイプで、細かいことが気になり、なにをやっても時間がかかって、なかなか前に進めなかったそう。そんな自分の特性が嫌で、「なんでもうまく、速くやれる器用な人になりたい」「細かいことを気にしない、細かいことで悩まない人になりたい」と思っていたというのです。つまり、共感タイプに憧れていたわけです。

そこで共感タイプを目指し、中学、高校時代はひたすら人づきあいを重視し、なにごとも要領よくやることを意識することに。大学は理系学部を選んだため、深掘り力を高めた効果はあったものの、大学生活やその後の社会人生活を送るなかで、かなり共感タイプ優位な人間になっていたと振り返っています。

ところが社会に出ると高い深掘り力が求められることとなり、ふたたび深掘り力を相当なレベルで鍛えることになったそう。おかげで相当に鍛えられたという実感を得ることができたものの、それが通用しない局面も訪れたため、さらに深掘り力を上げることを意識するようになったのだといいます。

ビジネスプロデュースでは、高い深掘り力が求められる場面もあれば、高い共感力が必要とされる場面もあります。(98ページより)

そのため、数々のビジネスプロデュースに関わることで両方の能力が徐々にバランスよく鍛えられ、なんとかビジネスプロデューサーへの道を歩むことができたというのです。

しかし当然ながらこれは著者だけにあてはまる話ではなく、すべてのビジネスパーソンが目指すべき方向性なのでしょう。(95ページより)

深掘り力や共感力を鍛えることは、ビジネスプロデューサーに限らず、これからの日本で活躍するすべてのビジネスパーソンにとって重要だと著者はいいます。

なぜなら、市場が成熟した日本で成果を上げていくためには、深掘り力と共感力の双方を高次元で併せ持つ必要があるから。こうした考え方に基づく本書は、これからの時代に必要なビジネススキルを高めるために大きく役立ってくれるはずです。

Source: PHP研究所

メディアジーン lifehacker
2023年8月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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