『ぎょらん』
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【気になる!】文庫『ぎょらん』町田そのこ著
[レビュアー] 産経新聞社
人が亡くなるときに残す赤い球「ぎょらん」を巡る連作集。口に入れてかみつぶせば死者の思いが分かると言われるが-。
かつてぎょらんを口にした青年・朱鷺(とき)を軸に物語が進む。不倫相手の事故現場でぎょらんを探す女性。夫を亡くし斎場で一夜を過ごす妻。葬儀社に勤める朱鷺はさまざまな人の死に接し、徐々にぎょらんの正体に近づいていく。後悔のない人生はなく、亡くなった人は決して戻ってこない。だが、その死に思いをはせ、願いを受け継ぐことはできる。死を通して生を見つめた良作。文庫版書き下ろし「赤はこれからも」を含む7編を収録。(新潮文庫・935円)