『評価される人になる技術』
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一生もののスキル「評価される人になる技術」とは?上司をうまく転がすヒント
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
人事評価は、ビジネスパーソンのやる気にも成果にも大きく影響を与えているもの。しかし『評価される人になる技術』(岡田洋介 著、ぱる出版)の著者によれば、「結果さえ出せば、評価される」というものでもないのだそうです。もちろん評価において結果は大切ですが、それ意外に「上司」という要素が強く影響しているということ。
たしかに、そのとおりかもしれません。一般的に評価を行うのは上司ですが、上司も人であり、感情を持っているものだから。
つまり、上司というファクターの理解なくして、評価をされ続けることは困難だということです。
上司に恵まれればよいのですが、なかなか上司に恵まれないというのも現実です。だからこそ、評価を上司次第の運任せにするのではなく、どんな上司であっても能動的に評価される技術が重要になります。(「はじめに」より)
社内異動や転職に伴って、上司は定期的に変わるもの。ましてや復業(副業)も当たり前のものになってきているので、同時期に複数の上司(発注者)を持つケースも増えていることでしょう。だからこそ、本書のタイトルにもなっている「評価される人になる技術」があるか否かが成功の鍵になるということです。
しかも、すぐに陳腐化してしまう実務スキルや専門性とは違い、「評価される人になる技術」は、働き続けている限り永続的に役立つもの。いわば、一生もののスキルだというわけです。
そして「評価される人になる技術」があると、1回ごとの評価で一喜一憂しなくて済むようになるのだとか。なぜならそれは、自身が信頼され、一緒に仕事をしたくなる人になるための技術でもあるから。
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第2章「評価される人は『上司こそが最重要顧客』と捉える」に焦点を当ててみたいと思います。
出世したければ贔屓にされるべき?
贔屓(ひいき)ということばは「えこひいき」を連想させるだけに、あまりいい印象がないかもしれません。しかし、不公平感のあるえこひいきとは違い、「贔屓にされる」には特別な人を応援するという意味合いがあるのだそう。
評価される人になる上で、最も大切なことは誰に評価されるかということです。あなたが会社員である以上、評価のキーマンは上司です。もちろん、お客様やユーザーに評価されることも大切ですし、後輩や同僚から評価されたいという気持ちもわかります。でも、目的が給与アップや出世なのであれば、上司から評価されることこそがその近道です。なぜなら、ほとんどの会社においては、上新評価が給与と昇進に結びついているからです。(46〜47ページより)
ちなみに著者によれば、「お客様に評価されることこそが最も大切だから、上司ではなくお客様に尽くす」という考えは“よくある誤解”なのだそう。
たしかに、お客様に喜ばれなければ会社は存続しませんし、ほとんどの企業は社会貢献や社会課題の解決のために事業を営んでいます。ただし、お客様からの評価は「会社が期待している喜ばれ方」と「そうではない喜ばれ方」があるというのです。
たとえばIT業界の客先常駐の技術者によくあるのが、「お客様の満足度は非常に高いが、過剰サービスになっている」というケースなのだとか。その場合、お客様には喜んでもらえるでしょうが、自社の利益率は下がることになります。極端な例のようにも思えますが、これは多くの会社で起こっている現実なのだと著者は指摘しています。
上司である管理職は、お客様の満足度と経営効率の両面において責任を負っています。多くの場合、上司はメンバーよりもその狭間でもがいています。この温度差が誤解を生んでいます。
そして、上司の立場を理解しておくことも大切です。経営からマネジメントを任されたのが上司です。評価も任されています。ある意味、経営の代理人です。(47ページより)
そして、上司が変わるまで、その事実は変わらないものでもあります。だとすれば、評価のキーマンである上司の満足度を上げる必要があるわけです。もちろん人事評価は公平に行うのが原則ですが、それでも上司に好かれることはとても大切だと著者はいいます。なぜなら人は、好きな人を応援したくなるものだから。
いいかえれば、贔屓にされるとは、応援されるということ。応援されるからこそ、価値を生み出しやすくなり、自分のしたいことも実現しやすくなるのです。(47ページより)
贔屓にされるために、まずは上司を応援しよう
上司に贔屓にされることが、上司に応援されることを意味する以上、忘れるべきではないポイントがもうひとつあるようです。すなわち、上司に応援されるためには、上司を応援することも欠かせないということ。応援されれば、必然的にお返しをしたくなるものだからです。なお、代表的な応援のあり方は2つあるそうです。
1つは、上司の目標達成を応援することです。あなたに目標や責任があるのと同様に、上司にも目標と責任があります。上司も上から評価されています。頑張っています。だからこそ、自分の部門目標をサポートしてくれる部下の存在はとても嬉しいものです。(中略)
もう1つは、上司のこだわりを尊重することです。人それぞれ仕事の進め方にこだわりがあります。同じ目標でも、大切にしたいプロセスは異なります。人間関係を大切にしたい人、分析や根拠を大切にしたい人、ミスがないことを大切にしたい人など、いろんなタイプがいます。ここを尊重できるかどうかが、応援されるかどうかの分かれ道になります。(50ページより)
ちなみに、中小企業の行動評価基準は多くの場合、経営者のこだわりが反映されているものです。そしてポイントは、トップがなにを大切にしているかということ。それはトップの好き嫌いであり、こだわりであるわけです。好き嫌いで人事評価をすべきではありませんが、評価基準を好き嫌いで設定することに問題はありません。
むしろ問題なのは、評価基準がないこと。評価基準があることで、その会社での出世や給与アップの基準を理解することができ、努力ができるようになるわけです。したがって中小企業の場合は、評価基準の背後にある経営者のこだわりを大切にすることが大切。そうすれば、トップに応援されやすくなるということです。(49ページより)
理想の働き方は人それぞれであるものの、これからの時代に求められる働き方は、「なにをするか」ではなく「誰とするか」に移行していくはずだと著者は予測しています。だからこそ本書を参考にしながら、「評価される人」を目指したいところです。
Source: ぱる出版