『買い負ける日本』坂口孝則著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

買い負ける日本

『買い負ける日本』

著者
坂口 孝則 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784344986985
発売日
2023/07/26
価格
1,034円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『買い負ける日本』坂口孝則著

[レビュアー] 西成活裕(数理物理学者・東京大教授)

 当たり前のことだが、メーカーは原材料が無ければ何も作ることができない。その多くは海外から調達しているが、いま日本はその入手に大苦戦している。産業の米とも言われる半導体をはじめ、マグロ、木材、牛肉から液化天然ガスまでも、日本は買い負けている。一体どうしてだろうか。

 本書は調達に詳しい著者がこの要因を分析し、その上で日本企業への応援とも言うべき重要な提言をまとめたものだ。海外から見れば、要するに日本に売るメリットをもはや感じていないのだ。昔の成功モデルが崩れているにもかかわらず変われない日本企業。輸送船が日本の港を通らない航路に変更されている衝撃。何とかしないといけない、というヤバさが本書からひしひしと伝わってくる。

 議論の焦点の一つが、日本の「過剰品質」体質である。あまり細かくチェックされるぐらいなら、チェックのうるさくない国に売りたくなるのは当然である。それでもかつては日本に魅力があり、売ってくれていたのだ。どうすれば日本の良さも残しつつ、変わっていけるか。全ての企業人にお勧めしたい一冊である。(幻冬舎新書、1034円)

読売新聞
2023年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク