『キャリアを切り開く言葉71 「自分の強み」に磨きをかける』
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ものの見方を変える「観察力を鍛える」ための3つのステップ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
人生も仕事も「思考と行動とタイミング」でつくられるもの。『キャリアを切り開く言葉71』(北野唯我著、KADOKAWA)の著者はそう述べています。「思考」と「ことば(口癖)」とには密接な関係があるのだとも。
僕たちが何を思うか、それが、僕たちが何を言うかを決定します。そして、僕たちが何を言うか、それが、他人とのコミュニケーションを形成し、僕たちの世界の理解のしかたを決めます。その理解は行動を促します。
やがて、世界を理解する方法や行動は、人生のライフステージとぶつかることで、キャリアの大きなサイクルを生み出します。(「はじめに」より)
興味深いのは、そんなキャリアのサイクルを、著者が春夏秋冬にたとえている点。つまり、春=芽生えの時期、夏=繁栄の時期、秋=刈り取り、冬=仕込みの時期といったイメージだというわけです。
たしかに、誰のキャリアにも春夏秋冬はあるかもしれません。しかしその一方、変化の節目は目に見えづらいものでもあります。したがって、ガイドのようなものが必要。そんな思いから本書は書かれたようです。
この本で紹介するメッセージは、僕が過去1000日以上にわたり、コミュニティのメンバーへ向けて発信し続けてきた“応援歌”ともいえるものから厳選したものです。
それぞれのメッセージは、人生の局面で得た洞察や感情、また、行動の結果から生まれました。
そして、それらのメッセージを通じて、僕たちは一緒に考え、一緒に学び、さらには一緒に成長してきたのです。つまり、僕だけに当てはまる話ではなく、数百の人に当てはまったメッセージということができるものです。(「はじめに」より)
新卒で博報堂、ボストン コンサルティング グループを経て、2016年にワンキャリアに参画した実績の持ち主。そうした実績をベースとして書かれた本書のなかから、きょうは第2章「[仕事術]自分に『期待値』を発生させる!」に焦点を当ててみたいと思います。
コツコツやることの大切さ
著者は、「人生とは長期戦であり、一方で短期戦である」とつねに思っているのだそうです。毎日、「長い目で見たときに勝てること」を、「“いつか”なんてない」と思いながらしつこくやり続けているということ。
重要なのは、「死んだときに残したい」と思えるようなものだけを毎日コツコツつくること、そして習慣を繰り返すことだそう。「もういいんじゃないですか?」「そんなに毎日やる必要ありますか?」と聞かれたとしても、答えは「ある」しかないというのです。
先日TEDで聞いて面白いと思ったのが、
「ギブアップはいいけど、クイットはダメ」
という話です。
ロッククライミングを練習しようとしている少女。彼女は今日登ろうとした。でもダメだった。だからギブアップした。
だけど次の日もその次の日もまた登ろうとした。そしてついに目標を達成した。彼女は言いました。
「ギブアップとクイット(辞める)は違う。そしてギブアップはいいけどクイットはダメ」(64〜65ページより)
著者はこのことばを、「人生そのもの」だと表現しています。もちろん人によっては、「なにかをクイットすること」がとても大切だというケースもあるでしょう。しかし、人生で大切な目標があるとするなら、「ギブアップはしてもいいけど、クイットはしない」と考えることは有効だというわけです。たしかにこれは、どんなことにもあてはまりそうです。(64ページより)
観察力を鍛える3つの方法
以前、東京工業大学で「スタートアップ就職や起業」に関するイベントに登壇した際に学生から「どういう人がスタートアップに向いているか?」という質問があったのだそうです。
これに対して、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一さん(元日経BP編集者)が次のように答えていました。
「私はこれまで多くの経営者の方の書籍を作ったり取材したりしてきました。その中で大きな企業の経営者は全員、観察力が高い。いい経営者で観察力が低い人を見たことがない。だから、観察力でしょうか」と。(86ページより)
この答えを聞いて、著者は大きく納得したようです。いい経営者のみなならず、いいビジネスパーソンは全員がそうなのかもしれないと。だとすれば、どうやってその観察力を高めたらいいのかが気になるところですが、この点について柳瀬氏はこう答えたのだといいます。
「視点を変えて考える」
観察力を鍛えるには、視点を変えて考える癖を持つ、ということです。(87ページより)
「Aさんならこうだろう、Bさんならこうだろう、Cさんならこうだろう」というように、視点を変えて1つのことを考える癖をつけるべきだという考え方です。
加えてもうひとつ、「現象に名前をつける」ことも重要なのだとか。どういうことでしょうか?
たとえば、医者の場合。病院に来た患者さんを診断して、症状に名前をつけることで薬を処方するなどの処置ができます。
同様に、ある出来事に対して「ピッタリの名前・名称」をつける癖をつけると、観察して言語化する力がつきやすいと思うのです。(87ページより)
さらに、「差分分析」も重要だそう。つまり、「いい〇〇と悪い〇〇はなにが違うのか?」を考えること。たとえば、いい商談と悪い商談があったとしたら、「なにが差分だったのか?」を分析するわけです。いうまでもなく、そうすれば「違い」に気づきやすくなるから。
① 視点を変えてみる
② 現象に名前をつける
③ 差分分析をする
(88ページより)
自身の強みになる観察力を鍛えるためには、この3点のトレーニングが重要だということです。(87ページより)
簡易な表現によって、ことばの重要性を説いた一冊。よりよいキャリアを切り開いていくために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: KADOKAWA