<書評>『坂本図書』坂本龍一 選書・語り

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坂本図書

『坂本図書』

著者
坂本 龍一 [企画・原案]/空 里香 [監修]
出版社
バリューブックス・パブリッシング
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784910865065
発売日
2023/09/27
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『坂本図書』坂本龍一 選書・語り

[レビュアー] 青木千恵(フリーライター・書評家)

◆思索のプロセスに触れる

 ことし3月28日に71歳で亡くなった音楽家の坂本龍一さんは、本好きだった。本書は、2018年から22年にわたり『婦人画報』に連載された「坂本図書」を再編集した一冊である。坂本さんが蔵書から本を選び、その著者ら36人の人物を自身の読書体験を交えて紹介している。

 <良い本は音楽と同じく何度も読みたい>。芸術、哲学、歴史、社会学、民族学、人類学、自然と生物など、音楽家として歩みながら自在に伸びていく関心や、疑問に応えたのが本だった。夏目漱石、ジャック・デリダ、黒澤明、今西錦司、ミヒャエル・エンデ、石川淳(じゅん)…。時間について考えたくて『存在と時間』を読み始め、ハイデッガーから直接学んだ哲学者、九鬼(くき)周造の本に出合う。本に気づかされ、もっと知りたいと、坂本さんは知識を得、見識を深めていった。

 亡くなる3週間ほど前、編集者の鈴木正文さんと“最近読んでいる本”について語り合った「2023年の坂本図書」も収録している。世界的音楽家の本棚と思索のプロセスに触れることができる。

(一般社団法人坂本図書発行、バリューブックス・パブリッシング発売・2200円)

1952~2023年。音楽家。文・構成伊藤総研、撮影Neo Sora

◆もう1冊

『草枕』夏目漱石著(新潮文庫)。漱石は坂本龍一が学生時代から全集を買って読んでいた。

中日新聞 東京新聞
2023年12月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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