<書評>『昆虫絶滅』オリヴァー・ミルマン 著

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昆虫絶滅

『昆虫絶滅』

著者
オリヴァー・ミルマン [著]/中里 京子 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784152102898
発売日
2023/12/05
価格
2,530円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『昆虫絶滅』オリヴァー・ミルマン 著

[レビュアー] 尾嶋好美(筑波大学サイエンスコミュニケーター)

◆人類のため軌道修正を

 トマト、ナス、ブルーベリーなどは、1分間に2万回近い振動がないと花粉を放出しない。それができるのは、ずんぐりむっくりとしたマルハナバチなどである。ミツバチは小さすぎて、必要な振動を起こすことができない。気づかないところで、多くの昆虫が私たちの役に立っている。

 しかし、森林伐採、農薬の使用、気候変動等により、全昆虫種の3分の1が今後数十年の間に絶滅する可能性があるそうだ。著者のオリヴァー・ミルマンは、この状況に危機感を覚え、多くの昆虫学者に取材を行い、本書を執筆した。

 昆虫がいなくなると、多くの植物は果実をつくれず、動物は飢えるようになる。昆虫の絶滅は人類絶滅の引き金になるのだ。昆虫絶滅を防ぐ方法として、著者らが提案するのは、自然に手を加えることをやめる「インアクション・プラン」。農地の一部を自然に返すことで、昆虫が増えることがわかった。手遅れになる前に軌道修正することができるのかが、今、私たちに問われている。

(中里京子訳 早川書房・2530円)

英国出身のジャーナリスト。英ガーディアン紙の専属記者。

◆もう1冊

『絶滅危惧の地味な虫たち』小松貴著(ちくま新書)

中日新聞 東京新聞
2024年2月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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