『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』
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<書評>『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』海野(うんの)和男 写真、伊地知英信 文
[レビュアー] 尾嶋好美(筑波大学サイエンスコミュニケーター)
◆探究に熱中して得た成果
今年はファーブル生誕二百年。本書は、貧困のため満足に教育を受けられなかった少年が生物学の大家となり昆虫記を執筆するという一代記と、全十巻二百二十一章の昆虫記の概要とを、多くの美しい写真と共に紹介している。
狩りバチは、ゾウムシの体内に卵を産みつける。孵化(ふか)した幼虫は動かないゾウムシを食べて育つ。「死んだはずのゾウムシが腐らないのは、狩りバチが産卵するときに防腐剤を注入しているから」と考えられていたが、ファーブルは詳細な観察と多くの実験により「ゾウムシの神経節を刺し麻痺(まひ)状態にしている。死んでいるわけではないので腐らない」ということを明らかにし、高く評価された。
昆虫の生態の解明に熱中し、地面をはいつくばって観察をするファーブルは、周囲から奇異の目で見られていた。そのためファーブルは広い庭のある自宅を高い塀で囲み、研究を続けた。困難があっても自分の好きなことを探究し続け、大きな成果をあげたファーブルの生き方は、今の時代だからこそ見習う点が多い。
(草思社・3300円)
海野 昆虫写真家。
伊地知 編集者・ライター。
◆もう一冊
『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?』須黒達巳著(ベレ出版)