「演じる」から「エンタテインメントを届けたい」に変化した30代

 20代前半は、どうしたら与えられた役を上手に演じられるか表現できるか、評価されるかばかり考えて、そういう欲にまみれていました。
 今も、ちゃんと欲はありますが、30代になって有り様が変わって。僕個人ではなくて、どうしたら作品が良い評判を得られるかに焦点がシフトしていきました。
 どうしてそう考えるようになったのかな。
 うん。賀来賢人くんが結婚してお子さんが生まれて、フジテレビの「ボクらの時代」というトーク番組に僕と彼と仲野太賀くんの3人で出演したんです。賀来くんは当時すでにCMにもたくさん出ていましたが、これから芸能界でどう登って行くかということをたくさんお話しされていて、自分が主演した番組の視聴率が気になるようになったし、エゴサーチもするようになったって言っていて。
 賀来くんとは長い付き合いなので、個人として役者としてお話しすることはありましたが、作品を気にかける座長としての賀来くんとちゃんとお話ししたのは初めてだなと思って。あの時が、もしかしたらきっかけだったかもしれない。誰かに言われて意識するようになったわけではなくて、自分で感じて変わっていったんでしょうね。
 同い年の役者さんが増えて、この仕事がより楽しくなっていったことも影響しているかな。昔は現場では一番年下でしたが、25歳くらいの頃、大学を卒業して芸能界に入った後輩と仕事をする機会が増えてきて、30歳になったら、「昔、テレビで観ていました」という人が現れるようになって。いい意味で距離の近いスタッフさんも増えてきて、自然と自分の中でチームワークが芽生えてきたのかもしれません。無理矢理ではなくいい意味で勝手に、変わっていったんですね。
 30代になってからエンターテインメント作品の見方が変わって、取り組み方も変わりました。20代の頃って、仕事の一環として舞台や映画を観ていて。大手の東宝や東映が配給している映画よりユーロスペースみたいな単館系で上演している映画を見漁っていた時代もあったし、映画人ぶりたかったというか、かっこつけたかったというか、やっぱり若い(笑)。
 けど最近は王道ラブコメが一番好き。「ハケンアニメ!」、面白かったですよ。興行収入が高い作品も観るようになって、「ひるなかの流星」「ピーチガール」「ママレード・ボーイ」とかすごく好き。きゅんきゅんしながら観ました。ユーロスペースでは絶対上演されない作品を好きになった頃から、エンタメが自分の好きなことになって、作品を100パーセント楽しめるようになって同時に、自分自身も「演じる」から「エンターテインメントを届けたい」と思えるようになったんだと思います。