女優の中江有里「格差を是正するのは思いやりに満ちた社会にするため」親しみやすい格差論を紹介

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 9月14日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家としても知られる中江有里さん(42)が出演し、月に1度の「ブックレビュー」コーナーで3冊の本を紹介した。

 この日中江さんが紹介したのは、読書の秋にふさわしい以下の3冊。

18歳からの格差論』井手英策[著](東洋経済新報社)
四百三十円の神様』加藤元[著](講談社)
過去をもつ人』荒川洋治[著](みすず書房)

20160916_01『18歳からの格差論』、『四百三十円の神様』、『過去をもつ人』

■親しみやすい格差論

『18歳からの格差論』は格差社会の現状や原因を独自の視点で掘り下げ大胆な政策を提言する一冊。著者の井手さんは慶応義塾大学で経済学を教えている。若者にも親しみやすいようにイラストやデータを用いて格差社会の問題点や解決策が非常にわかりやすく書かれている。中江さんは「格差を是正するのは思いやりに満ちた社会にするためでもあるんです。一人一人の心がけや発想が社会を変えていくんだということを教えてくれる一冊。広い世代の方々に読んでほしい」と評した。

■胸の熱くなる短編集

『四百三十円の神様』は短編集。世間から少しはみ出た人たちに起きる小さな奇跡。読む人に勇気を与える応援歌のような7篇が収録されている。中江さんは「それぞれ設定も主人公もばらばらだが、共通している点は、どこか陰がある特別ではない人たちがささやかな日常を生きている。ほんの少しでも前進する姿が非常に胸を熱くさせる。文章のリズムが独特で、落語っぽくてしっとりした情感があり、心地よく読めた」と薦めた。

■読書の深さを教えてくれる

『過去をもつ人』は現代詩作家による“読書”にまつわる61編のエッセー集。文学作品のみならず、辞書やハウツー本、地図帳までもをとりあげ、その面白さを紹介している。中江さんは「読書に対する思いに刺激を受ける。寝る前に1編ずつ読んで、胸がほっと落ち着いて眠りに就く」と読書家として共感をあらわした。番組司会の島津有理子アナウンサー(42)も同書に掲載されている書評は「読んだことがない本でもうまくエッセンスを伝えてくれるので読みたくなる」と読書意欲を掻き立てられる一冊だと紹介。また中江さんは「本を読むということは過去を知ること。本っていうのは深いなということを教えてくれる本」だと評した。

 最後に中江さんは今回の3冊について「格差論は現代とはどういうものなのか考えるヒントを与えてくれる。残り2冊も社会全体に関わってくるのかもしれない。思いやりとか、他人への共感とか、そういったあまりシステマチックじゃなく、ちょっとしっとりとした感じで物事を見ていくことが、社会全体をよくしていくのかな」と共通するテーマを振り返った。

ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に1度放送される。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年9月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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