50万部突破 第158回芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』が岩手弁で書かれたわけ

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 3月6日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、単行本 文芸書第1位は『おらおらでひとりいぐも』が獲得した。
 第2位は『青くて痛くて脆い』。第3位は『オリジン(上・下)』となった。

 1位の『おらおらでひとりいぐも』で第158回芥川賞を受賞した若竹千佐子さん、同じく芥川賞を受賞した石井遊佳さん、第158回直木賞を受賞した門井慶喜さんの3人が9日のTBS系読書バラエティ番組「ゴロウ・デラックス」に出演した。夫に先立たれた主人公の桃子の内側から湧き上がる声を描いた『おらおらでひとりいぐも』は全編岩手弁で書かれている。作中の一文「てへんだあなじょにすべがあぶぶぶぶぶっぶぷぷ」を朗読した番組司会の稲垣吾郎さんは上手く読めず「すみませんでした」と頭を下げるほど。

 若竹さんと同じく岩手出身の宮沢賢治を題材に、『銀河鉄道の父』を書いた門井慶喜さんの作品にも岩手弁は使われている。門井さんは若竹さんに対し、「方言を文字にするとき100%話し言葉を文字することは出来ないじゃないですか」と目指した表現の意図を訪ねた。若竹さんは「耳で聞いた音を文字で表すのは難しいんだけど、どうしても言葉の厚みとか温かみを伝えたくて。もしも分からなくてもしょうがない。それを犠牲にしても(言葉のリズム感とかを伝えたい)」と語った。それを受け稲垣さんは、門井さんの作品は方言を使用していても読者にわかりやすいように「逆に親切に書かれている」と評していた。

1位『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子[著](河出書房新社)

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――(河出書房新社ウェブサイトより抜粋)

2位『青くて痛くて脆い』住野よる[著](KADOKAWA)

人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年の春、僕は秋好寿乃に出会った。空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。「僕が、秋好が残した嘘を、本当に変える」それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた――。青春の煌めきと残酷さを痛烈に描ききった、著者渾身の新境地!(KADOKAWAウェブサイトより)

3位『オリジン(上・下)』ダン・ブラウン[著]越前敏弥[訳](KADOKAWA)

スペインのビルバオ、マドリード、バルセロナを舞台に、ラングドンの前に最強の敵が立ちはだかる! 鍵を握るのは、人類最大の謎「我々はどこから来たのか、どこへ行くのか」――。全世界で2億部突破のベストセラー作家、ダン・ブラウンの最高傑作が満を持して日本上陸!!(KADOKAWAウェブサイトより)

4位『銀河鉄道の父』門井慶喜[著](講談社)

5位『いのち』瀬戸内寂聴[著](講談社)

6位『素材採取家の異世界旅行記(4)』木乃子増緒[著](アルファポリス発行/星雲社発売)

7位『居酒屋ぼったくり(9)』秋川滝美[著](アルファポリス発行/星雲社発売)

8位『屍人荘の殺人』今村昌弘[著](東京創元社)

9位『それまでの明日』原尞[著](早川書房)

10位『聖者無双 サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道(4)』ブロッコリーライオン[著](マイクロマガジン社)

〈単行本 文芸書ランキング 3月6日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2018年3月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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