草なぎ剛、竹内結子主演で映画化された小説『黄泉がえり』は、熊本地震を予知していた!?

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

 2016年4月14日に熊本地方を震度7の地震が襲ってから、3年が経った。作家の梶尾真治さんも、地震の被害で自宅の取り壊しを余儀なくされた一人だ。梶尾さんは当時のことを振り返り「日常的な生活を送っていたのに、突然異世界に放り込まれたような感覚がしました。最初の揺れが起きた時は、何が起こったのか、わからなかった」と語る。

 そんな梶尾さんが2000年に刊行した小説『黄泉がえり』は、草なぎ剛、竹内結子主演で映画化もされベストセラーとなった。それから約20年の時を経て、今年3月に続編『黄泉がえり again』が刊行された。

「地震のあと感じたのは、こうした状況下で小説家には何もできない、ということ。小説家として、町のために何ができるか考えた時に、被災した熊本のみんなを勇気づけるための物語を書こうと思いました。『熊本を蘇らせる話を書きたい』、そう心から思ったんです。前作『黄泉がえり』のような哀感をそそる話ではなくて、読んだら熊本も蘇るような、人が元気になれるような明るい話を書きたいと思いました」(梶尾さん)

2000年刊行の小説『黄泉がえり』は、草なぎ剛、竹内結子主演で映画化もされベストセラーとなった
2000年刊行の小説『黄泉がえり』は、草なぎ剛、竹内結子主演で映画化もされベストセラーとなった

 続編の舞台は、被災翌年の2017年の熊本。まだ地震の傷跡も生々しい町で、死者が蘇る“黄泉がえり”現象がふたたび起きる。身近な人々のみならず、熊本城を築城した肥後熊本藩初代藩主・加藤清正までもが400年ぶりに蘇生する。

「熊本の人たちを喜ばせるために誰を蘇らせたらよいかを考えたときに、まっさきに加藤清正が浮かんだ。
 実際に、地震後の人々との会話のなかで『いま、こんなに壊れてしまった熊本城を見たら清正公さんがどう思うだろう』という話が出てくることがあったんですよね。地震があったことで、熊本のヒーローである加藤清正の存在がどんどん大きくなった。新聞連載だったので、清正への読者の反響が大きいこともわかった。書きながら、清正が生身の人間としてどんどん魅力的なキャラクターになっていきました」(梶尾さん)

 実は2016年の震災直後には、『黄泉がえり』の中で描かれている地震の描写が現実とほぼ同じだと話題になったことがあった。

「『黄泉がえり』のラストの地震が、実際に起きた熊本地震に酷似していることは、最初、自分は気づいていませんでした。出所はtwitterやamazonの書評で、それをSNSで教えてもらってはじめて知りました。最初に聞いたときは『俺、そんなこと書いたっけ』と思いました。あらためて読んでみたら、直下型地震で震源が益城町であること、震度7という地震規模もほぼ同じで驚きました。自分が集合的無意識の先端となって、何か不思議な力に書かされたのではないか、とすら思いました」(梶尾さん)

 NHK熊本のニュース「クマロク!」(3月20日放送)で『黄泉がえりagain』の特集が放送され、そこに梶尾さんも出演。以来、熊本の人から声をかけられることが多くなったという。

「『梶尾さんですよね。いま「again」読んでます』とか『書店で買いました』とか…。長年の作家生活のなかで、ここまで読者から直接声をかけられる作品ははじめてです。この本を出したことで、少しでも熊本の役に立てていたならば嬉しいですね」(梶尾さん)

2019年4月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク