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- 平場の月
- 価格:1,760円(税込)
第32回三島由紀夫賞と山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)が15日に発表された。山本賞(または山周賞)は朝倉かすみさん『平場の月』(光文社)が、三島賞は三国美千子さん「いかれころ」(「新潮」2018年11月号)が受賞した。朝倉さんは2度目の候補での受賞、三国さんはデビュー作での受賞となった。
山本賞を受賞した朝倉かすみさんは、1960年、北海道生まれ。2003年に「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を、2004年に「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞。2005年に『肝、焼ける』で単行本デビュー。2009年に『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞した。その他著書に『ロコモーション』『夏目家順路』『地図とスイッチ』『静かにしなさい、でないと』『満潮』『乙女の家』などがある。
受賞作『平場の月』は、50歳になった男と女の恋愛を描いた小説。互いにバツイチとなった男女が偶然の再会し、意気投合した二人が心のすき間を埋めるよう求め合っていく物語だ。
書評家の瀧井朝世さんは、《一人は病と闘いながら自分の気持ちを密かに整理し、一人はそんな相手を淡々と支える。若い頃の恋愛とはまた違う、人間同士の慈しみが二人の関係を育んでいく。おのれの孤独を引き受けながらも誰かを求める大人の寂しさと優しさが、じわじわと行間から伝わってくる。二人の関係の結末は冒頭ですでに明かされており、だからこそ、読者は彼らの緩やかな歩みの一歩一歩を愛おしく感じるはずだ。思いやりを与え合えた二人の時間が、胸に沁みてくる》(小説宝石)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/562156 )
三島賞を受賞した三国美千子さんは、1978年大阪府生まれ。近畿大学大学院日本文学研究科修士課程修了。主婦。「いかれころ」で第50回新潮新人賞に選ばれ、作家デビュー。
受賞作の「いかれころ」は、大阪府南東部に住む杉崎一族の人間模様を、女児・奈々子を主人公にして丹念に描き出した小説。婿養子や私生児、精神疾患などに対する登場人物たちの視線を描きながら、差別が生まれてしまう構図を巧みに描く。
三島賞・山本賞は昭和63年に創設された文学賞。三島賞は小説、評論、詩歌、戯曲を対象とし、文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に、山本賞は主に小説を対象とし、すぐれて物語性を有する新しい文芸作品に与えられる。
候補作品は以下のとおり。
■第32回三島由紀夫賞候補作(出版社・掲載誌)
『名もなき王国』倉数茂(ポプラ社)
「いかれころ」三国美千子(「新潮」2018年11月号)
「図書室」岸政彦(「新潮」2018年12月号)
『壺中に天あり獣あり』金子薫(講談社)
「青痣」宮下遼(「群像」2019年3月号)
■第32回山本周五郎賞候補作(出版社)
『火のないところに煙は』芦沢央(新潮社)
『鯖』赤松利市(徳間書店)
『平場の月』朝倉かすみ(光文社)
『カゲロボ』木皿泉(新潮社)
『落花』澤田瞳子(中央公論新社)
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