ホロコーストは映像で伝えられるか? 鬼才セルゲイ・ロズニツァによるドキュメンタリーが公開

映像化

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映画『アウステルリッツ』オリジナルポスター

 歴史上稀にみる悲劇として人類の記憶深くに残るナチスによるユダヤ人の大量虐殺。それを「作品」として描くことは可能なのか――これまであまたの作家や映像作家などが取り組んできたテーマだ。

 まもなく公開となる映画『アウステルリッツ』も、このテーマに取り組んだ作品だ。大量虐殺が行われたベルリン郊外のザクセンハウゼン強制収容所の跡地に据えられたカメラは、世界各地からダークツーリズムで訪れる「観光客」の姿を、長回しのショットで淡々と捉えていく。カンヌ国際映画祭で2冠、近作10作品すべてが世界三大映画祭に選出されている鬼才セルゲイ・ロズニツァ監督が挑んだ、実験的なドキュメンタリー作品だ。

 本作製作のきっかけになったのは、ドイツ生まれの作家W・G・ゼーバルト(1944-2001年)による同名の作品『アウステルリッツ』(白水社より邦訳2003年刊)だ。アウステルリッツという名の建築史家が、物語の語り手である〈私〉を相手に、ヨーロッパ各地の帝国主義の遺物に関する博識を開陳しながら、暴力と権力の歴史を語っていく小説ともノンフィクションともとれる実験的な作品だ。

 映画『アウステルリッツ』は『国葬』、『粛清裁判』とともに3作一挙公開となる。ロズニツァ監督作品は本邦初公開。映画公開を記念し、ドイツ映画とドイツ文学の研究者が公開対談を行う。映画と文学の2つの〈アウステルリッツ〉が扱う、それぞれの背景を解説しながら、ロズニツァとゼーバルトに共通する眼差しについて、そして忘却に抗うために映画や文学ができることについて語る。

イベント概要
■タイトル
忘却に抗うために——映画と文学の2つの『アウステルリッツ』
■登壇者
渋谷哲也(ドイツ映画研究、東京国際大学教授)/松永美穂(ドイツ文学研究・翻訳家、早稲田大学教授)
■開催日時
2020年11月7日(土)19:00〜21:00
■場所
本屋B&Bによるオンライン開催
■チケット予約
https://peatix.com/event/1685670/view
■協力
白水社
■主催
サニーフィルム
https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa

映画公開情報
2020年11月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて「国葬」「粛清裁判」「アウステルリッツ」3作一挙公開、全国順次ロードショー

2020年10月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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