年末年始になると家族が集まる機会が増えますね。こんな時は、相続の話題もでてくるものです。
2018年(平成30年)には、40年ぶりに相続税改正されました。そして、令和2年(2020年)7月10日には自筆証書遺言の保管制度がスタートし、これは自筆証書遺言方式の緩和、銀行口座停止時の仮払制度、配偶者居住権の創設に続く、相続法改正の最後の施行となります。
今までと何が変わったのか? 気を付けなくてはいけないことは?
そこで、深代会計事務所の理事長・深代勝美さんが、遺言書作成から生前贈与、税務調査までを網羅した書籍『【改訂2版】ゼロからはじめる相続 必ず知っておきたいこと100』(あさ出版)より、施行された相続税改正のポイントをご紹介いたします。
年末年始を機に相続について、みなさんで話しあってみてはいかがでしょうか。
ポイント① 自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書遺言は自分一人で作成でき、費用もかからない手軽な方法ですが、改正前では遺言者が、不動産や預金などの財産全部を手書きすることが必要でした。改正により、財産目録については手書きで作成する必要がなくなり、登記簿謄本のコピー、通帳のコピー、パソコンで作成可能になりました。
ポイント② 預金の仮払制度の創設
従来は、相続が開始すると預金が引き出せず、葬儀費用が当座の生活費に困ることがありました。しかし、預金の仮払制度により、「金融機関の預金残高×1/3×法定相続分」と150万円のいずれか少ない金額は引き出せるようになりました。
ポイント③ 遺留分侵害額請求権へ変更
遺留分が遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ変更されました。遺留分権利者は、相続財産を直接取得する物権的権利がなくなり、金銭での請求だけとなったので、遺言者が自宅と自社株式は長男に……などの特定財産を渡したいとの想いは実現でいるようになりました。
しかし、金銭に代えて、相続した土地を渡した場合には、代物弁済となり、税務上は譲渡取得税が課税されてしまいますので注意です。
ポイント④ 相続開始前10年間分だけが対象
相続人への贈与が相続開始前10年間分だけしか民法上相続財産に加算されなくなりました。節税だけではなく遺留分対策という意味でも早めの生前贈与の開始が大事になりました。
ポイント⑤ 配偶者居住権の創設
令和2年4月1日から配偶者居住権が創設されました。創設の目的は高齢化社会の進展で「先妻の子と後妻」との相続等、複雑な家族関係が増加されることが予想されています。そのため、実の親子ではあまり起きないでしょうが、配偶者が居住する家を相続できないなどの問題を生じさせないためです。
この結果、配偶者が居住する家屋は、配偶者居住権と子どもも配偶者居住権付所有権とに分かれることになります。
一方、税法から見た場合には、配偶者が相続した配偶者居住権は、配偶者の死亡により消滅するとされています。つまり、配偶者から子どもに相続されるのではなく消滅するので、配偶者居住権付きの居住用財産を所有する子どもは、無税で完全なる所有権になります。
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ポイント⑥ 自筆証書遺言の保管制度がスタート
令和2年7月10日から、法務局(遺言保管所)で遺言の保管がスタートしました。
従来は本人が書いた自筆証書遺言は誰もチェックしないまま相続を迎えることが多く、登記ができない遺言書が多々ありました。
自筆証書遺言の保管制度では遺言書保管官は遺言書の形式的な事項、たとえば遺言書の署名、日付のモレなど、有効性をチェックしてくれますので、登記ができない、預金が引き出せないなどの遺言が少なくなることが期待されています。
なお、費用ですが遺言書の保管申請をする場合は3,900円です。遺言書情報証明書の交付請求する場合は1通につき1,400円になります。
相続税対策や遺言書作成などの相続対策は、このような法律の現状を知ること、いま手元にある資産を把握することが出発点です。事前にさまざまな準備をしておくことで、より多くの財産を家族で分け合えることになり、遺産分割も納税もスムーズに進められます。
最近は遺産分割での争いが増加していますので、なによりも、事前の準備で大事なことは、相続をめぐって家族間の争いごとが起きないように遺言書を作成することです。お金よりも大切な、家族の絆が切れてしまったら取り返しがつきません。
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